■「票ハラスメント」だけではないハードル

女性の政治参加を阻む壁は、「票ハラスメント」だけに留まらない。

6月9日、衆議院は、全ての衆議院議員を対象に行ったジェンダーに関する初めてのアンケート調査の結果を公開した。アンケートでは、国会議員に占める女性の数について「不十分」、「どちらかといえば不十分」という回答は、82.7%を占めた。現職の衆議院議員が匿名で記述した回答からは、いまの日本の政治に様々なハードルが潜んでいる実態が浮き彫りになっている。

問:
『国会への女性の参画拡大が妨げられていると思う理由は?』

答:
「家事・育児・介護など女性への負担がいまだ多い。夜間に政治が動く長年の慣習」

「そもそも、『ドブ板』と呼ばれる選挙活動が時間と肉体を消耗し女性に不利である」

「候補者が、私的生活を犠牲にしてフルタイムでの関与をしないと当選できないような制度になっている」

「育児や家事の負担を、自助で軽減できたり、経済力があったり、社会的地位があったりする女性(男性)だけが選挙に挑戦できる状況だから。現状の選挙制度そのものが、世の中の平均的な女性が議員になれない仕組みになっていることを変革する必要がある」

育児や介護などの負担が女性にのしかかっている現状に加え、夜や週末も犠牲にしないと成り立たない政治家の働き方、“ドブ板”と呼ばれる選挙制度などの多くの課題を、国会議員自身も認識していることが窺える。

■「意思決定の場に女性が増えれば、誰もが生きやすい社会に」

硬直化した政治文化を変えたいと、新たな取り組みも生まれている。

参院選の公示直前の6月21日、党派を超えて女性の候補者を応援する「女性に投票チャレンジ」というプロジェクトが立ち上がり、記者会見が行われた。

大学生も含め20人ほどの有志のメンバーが、インスタグラムやTikTokなどを通じ、特に若い世代に、女性候補者への投票を呼び掛けている。

(「女性に投票チャレンジ」メンバー 大島碧生さん(大学生))
「特に女性に関する政策は、私たちこれからの世代にすごく関わってくる問題だと思うので、私たちの声を代弁する女性政治家が増えてほしいと思っています。いまは政治について話すのはハードルが高いんですが、『明日なに食べる?』という会話と同じように、『誰に投票する?』と話せるようになってほしいです」

「女性に投票チャレンジ」の代表で、働き方改革コンサルタントでもある天野妙さんは、女性の政治家が増えることは、女性のためのみならず、社会全体のためになると語る。

(「女性に投票チャレンジ」代表 天野妙さん)
「男性でも、長時間労働で負担を感じている人や、様々な生きづらさを抱えている人はたくさんいます。いま政策を決めている人たちには、そういう生活の苦しみを感じてきた人は少ないんじゃないでしょうか。女性の国会議員が増えると、政策の優先順位も変わります。生活の実感を持っている女性が意思決定の場に増えていけば、若者も男性も、誰もが生きやすい社会の実現につながるんじゃないかと思います」

7月10日に投開票を迎える参院選では、立候補者に占める女性の割合は33%と、過去最多となった。この参院選で、政治に風穴はあくのだろうか。