河西弁護士「法的な評価ポイントは単発の発言よりも環境」

日比キャスター:
続いては、上級生からのパワハラについてです。「劇団員へのヒアリングにおいて、いじめられていたとする供述はない」としました。
「公演ではAはよりよく見えるようアドバイスを行っている。気遣う言葉もかけている」。Aというのは、遺族側からの告発などによりますと、いじめていたのではないかとする劇団員のことです。
そして調査の結果「いじめられていたと断定できない」。このような内容が発表となりました。河西先生、この点はいかがでしょうか?
レイ法律事務所 河西邦剛 弁護士:
結論的には、劇団側のほうは安全配慮義務を果たせなかったと責任は認めています。
今回、実施事案において非常に大きなポイントは、最後のトリガーがどうだったのか。たとえばパワハラ的な発言があったのかというのもあるんですけれども、やはり、そこに至る通常の正常な判断ができないほどの労働環境については認めています。
いわゆる法的にどう評価するのかという大きなポイントはハラスメント、単発の発言よりも環境になってきますね。
ホランキャスター:
松田さん。ハラスメントというのは、受け手側と行っている側でそれぞれ、どれくらいこれがハラスメントになりうるかという受け取りはまったく変わってきます。
そのなかで25歳の劇団員の方が亡くなってしまっていらっしゃいますし、ご自身の主張もすることができないなかで、どう認定していくか。

元競泳日本代表 松田丈志さん:
スポーツの現場でもよくありますけれども、やはり上級生からの指導、コーチングの内容がどうだったのか。そこにパワハラがあったのかというのは、証明するのはちょっと難しいのかなと。
逆に今回は、過重労働がどこまであったのかというところがポイントになってくると思いますし、実際、長時間労働の時間の意見が食い違っていると思うので、そこがしっかりきちっと調査してほしいポイントです。
僕が感じたのは、厳しいトレーニングや自己研鑽の先に人を感動させるパフォーマンスがあるというのはスポーツも演劇も同じだと思うんですけれども、それはやはり正しいトレーニング、訓練と、そこに食事であったり休養だったりが合わさって生まれてくるものです。
心身の健康を損なうまでの過重なトレーニング、労働というのは、やはりするべきではないと思いますよね。
ホランキャスター:
河西さん。本当にご自身のことだけに集中すればいいのではなくて、やはり上級生となっていくと、下級生の指導もしなければならない。責任がいろいろあるなかで、どんどんどんどん思い詰めてしまうという部分はありうるんでしょうか。

レイ法律事務所 河西邦剛 弁護士:
ありえます。まさにそれがある意味、今回、劇団側と遺族側の見解の違いにもなっていて、長時間労働、過重労働のところも、遺族側は結構、時間にフィーチャーしているんですよね。
ただ劇団側のほうは、新人公演について、人員配置が実質2人だったというところから過度な負担があった。そこから精神的負荷が生じていって自死に至っている、といった形になっています。その構成がどうなっているかというのがポイントかなと思いますね。
ホランキャスター:
劇団としてもやはり、肉体的な不安、心身的な負担みたいなものを分散できなかったという面では、しっかりと管理、把握できていなかったのかなという部分はありますよね。