げんきくん 自ら入店し、いよいよ散髪へ
なかなか店に入ることができなかったげんきくん。
赤松さんは“恐怖心を取り除くために家でも練習してほしい”と母親に伝えていた。

その成果もあって、徐々に店にも慣れてきた。それでも赤松さんは半年間、決してハサミを持つことはなかった。
2023年6月(7回目)。この日、げんきくんは自分で店へと入っていく。

自ら座ってくれたきょうなら切れるかもしれない、赤松さんはハサミを手に取った。
赤松さん「今日はちょっと短く切りますよ」
着々とカットは進む。

けれど、げんきくんはなにかを訴えるように声をあげつづけている。
げんきくんの母親「げんちゃんすごいな、なんか別人みたい」
赤松さん
「まあ理解はしてるけどね、嫌がってるのがね。これをもうちょっと受け入れられるようになるかが課題やな」

赤松さん
「切るってことに関してはできたからよかったんですけど、全くスマイルカットじゃないじゃないですか。げんちゃんは嫌がってるし、あの子の気持ちに立った時に、これがよかったねの世界なのかと思ったら、きっと嫌なことされて終わったってなってるんで、だから僕にとっては課題山積みです」
仕事をこなそうと焦っていたのかもしれない。自分はげんきくんに寄り添えていたのだろうか。問い続けた。
“発達障がいのためのヘアマニュアル”を作り、寄り添いたい
8月、赤松さんは横浜市を訪れていた。
希望していた大学院に合格し、改めて発達障がいについて学んでいる。
この日は教授やゼミ仲間の前で制作途中の論文の方向性について説明した。

赤松さん
「彼らは特性っていうのがあるので、それに対して心理的アセスメントの知見を得て探究して不快さなどを回避する方法を明らかにしていきたい。さらにヘアマニュアルを作って、そのマニュアルをどういう風な存在として、作っていくべきかを検討するということを目的としている」
どうしたら発達障がいのある子どもの気持ちに寄り添い、不安を取り除けるのか。大学院で“答え”をみつけ、2年後にマニュアルを完成させる予定だ。