「息子が髪を切る美容室がなく、困っている」軽い気持ちで引き受けるも…

子どもが好きで、小学校の教員を志すも果たせなかった。

知人に誘われ、美容師の道に。

次第に子どもの髪を切ることにやりがいを感じていく。30歳で独立、経営が軌道に乗り始めた頃、発達障がいのある子どもの母親から「息子の髪を切る美容室がなく、困っている」という相談を受け、軽い気持ちで引き受けた。

ところが…

赤松さん
「バリカンのスイッチを入れた瞬間、その子パニックになったんです。聴覚の過敏と極度の緊張状態の中でカットに挑んでた子で、本当に自分の中でもショックで。それで初めて発達障がいについて勉強しようと思った」

それから発達障がいについての本を読み、専門家に話を聞きに行くなど、勉強を重ねた。

そして2014年、この活動を全国に広めようとNPO法人「そらいろプロジェクト京都」を立ち上げる。

2023年3月20日、愛知県一宮市。

赤松さん
「きょうはスマイルカットをやってくれてる愛知県の美容師さんから相談があって、いろんなところから子どもの依頼が来て大変だと、できたらこの愛知県の地域でもスマイルカットをやってくれる店を作りたいんだという相談があって」

赤松さんはこの9年、店が休みの日は、全国をまわりスマイルカット講習会を行っている。

この日は東海地方の理容師・美容師を中心に23人が参加した。

赤松さん
「実際いま僕がどういう風にしてやってるかというと、難しいことをみんな思いがちなんですけど、ほんの少しの配慮と工夫だけなんです。発達障がいの子どもは困った子どもではなくて、困っている子どもなんです。困っている子が目の前にいたらできませんって終わるんですか。僕は美容師ですから髪の毛を切ることで困っている子がいたら大丈夫だよって笑顔で手を差し伸べたいなと思っています」

こうした活動を積み重ね、「スマイルカット」は29都道府県、70店舗にまで広がった。

活動は確実に実を結んできている。

しかしその一方で、講習会だけでは限界があると感じていた。

赤松さん
「自分が昔このスマイルカットを始めた時に、頭打ったというかどうしていいかわからないことがいっぱいあったんですけど、その時に“発達障がいの散髪”とかで検索しても一切出てこなかった、文献も書物も」

そこで赤松さんは、より多くの理容師・美容師が対応できるように「発達障がい者向けのヘアカットマニュアル」を作ると決めた。そのために大学院を受験し、本格的に発達障がいについて学ぶことにした。