36人が犠牲になった京都アニメーション放火殺人事件の裁判は、「動機と経緯」「責任能力」「量刑」の3要素に分けて進められている。13回目から最大争点である「刑事責任能力」についての審理がはじまった。青葉真司被告(45)を精神鑑定した医師2人が鑑定結果を説明したが、その見解は『異なるもの』となった。裁判員の判断が迫られる重要な局面で、検察・弁護側とも丁寧に裁判員に説明する様子が印象的だった、裁判ドキュメント15回目。
▼責任能力とは、良いことと悪いことを区別する能力です
「第一に責任能力とは、①良いことと悪いことを区別する能力、②その区別に従って犯行を思いとどまる能力です。これがない場合は無罪、著しく欠如していた場合は刑が軽くされます」
検察官はこう説明すると、「被告には妄想の症状はあったものの、妄想に支配された犯行ではなく被告のパーソナリティが現れた犯行だった」「”自分はすべて失ったのに京アニは成功していて許せない”という筋違いの恨みを募らせ復讐を決意し、何度もためらった末に自らの意志で犯行を決意した」と、完全責任能力を改めて主張した。
対する弁護側はこれまで、「被告には責任能力がなく無罪または減軽されるべき」と主張している。この日弁護人は裁判員に向かって、「(検察側が請求した)医師が資料としたのは、警察・検察が集めた資料のみで、弁護側が集めたものを見ていません。片方の”不利な”光が当たった、鑑定の情報に偏りがないか、不足していた情報がないか、検討してください」と注意を促す発言もあった。