ロシアのウクライナへの軍事侵攻から4か月、この戦争がアジアに与えた影響は?
東南アジア各国との関係を強化し影響力を拡大させる中国、「自由で開かれたインド太平洋」の実現を目指し連携を強化するQUAD(日・米・豪・インド)、東アジアをめぐる大国間競争の構図と安全保障環境について、防衛省防衛研究所理論研究部の政治・法制研究室長、増田雅之氏に聞きました。(聞き手:川戸恵子)

■覇権主義体制の国では「失敗が許されない」


ーーロシアのウクライナ侵攻による戦争を、中国はどう見ている?

防衛省防衛研究所理論研究部 増田雅之氏:
この戦争が、ロシアが大規模に侵攻する形で発生する、そしてこんなに長期化するというのは、中国は思ってもいなかった。その意味で想定外の事態が発生したと。ただ想定外の事態が発生したからといって中国が新しい施策をとったというと、全く取っていない。様子見という言い方もありますが、基本的には、中国の元々持っていた頭の構図の中で対応をしているというところで、その一つがやはり米中の対抗というか、競争が深化するという中で、この戦争がどういう意味を持つのかという、そういう見方をしているんだろうなと思います。
明らかに秩序を壊した。この時代に侵略という形で壊したロシアとくっつくと、維持するということによって中国の評価というものが、当然、国際社会で下がってくる。そこのリスクをどう取るかといったところは、当然、中国も意識はしてるんですけども、ただ中国はそのリスクよりもロシアとの関係を維持することの方が重要だというところを、今はまだそこに向けて走っている。その一つは、やはり中国が権威主義体制国家であること。習近平(国家主席)がこの秋の党大会で間違いなく3期目に入っていくという中で、ある意味、権威主義体制の国では失敗が許されないですから。習近平(国家主席)が導いてきた中ロ関係、最も高いレベルの2国間関係です。

増田雅之氏(左)と川戸キャスター(右)


ーー(北京)オリンピックの前に2人で会ったときにね、わざわざそれを念押ししたというような感じでしたね?

増田氏:
この2年余りのコロナ禍で、習近平(国家主席)が初めて、対面での首脳会談をやったのがプーチン大統領であって、他にもいろんな国が来て首脳会談やってるんですが、プーチン大統領との首脳会談の写真はマスクを外して、やはり特別感というものが明らかにあるということですよね。やっぱりロシアおかしい、中ロ関係はこのままじゃ駄目だという議論は、当然、国内にはあると思うんですが、ただそれが直接の見直しということには、そう簡単に繋がらないのは、やっぱり習近平の顔が見えているというとこが大きいと思います。

ーー今後の中ロ関係はどうなる?

増田氏:
ロシアと中国、それぞれ大国だと思うんですが、やっぱり余裕がある大国は中国の方で、悪く言うと大国面しているのがプーチン大統領の方なわけですね。経済面でもかなり小さい規模であるし、唯一、核を持っているというここが今回の戦争でも大きな意味を持ちましたけども、そこだと。相手の行動を変えさせるという目標があるのであれば、いろんな手段というのを中国は持っているわけです。まさに一番大きい中国の手段は経済、やっぱお金なんです。ロシアはそういう手段を持ち得ていない中で、表面的な大国として持ちうる手段がないがために、最終手段としての軍事力の行使と、大規模な行使というところに繋がったので、中国から見ると、力のないものがなぜここまでやったのかというふうには見えている。
その一方でただ、核の意味というものは、中国も恐ろしく認識をしているんですね。これまであまり中国の軍のメディアがこの戦争を報じるってことなかったんです。それが、徐々に今はこの6月の半ばぐらいから出始めている。その一つが、「この戦争でどういう兵器が使われたのか」ということがあります。もう一つは核の問題、戦略核での脅しといいますか。それが効いたという意味で、やっぱり核の体制はというものは必要だと匂わせる議論が、少し今出始めている気がします。