笑顔で手を振る軍幹部 そのワケは
2021年のクーデターで全権を掌握したミャンマー軍は国内統治の根拠として「非常事態宣言」を発令し、2023年8月までに総選挙を実施する意向を示していた。
だが、民主派勢力などによる武装闘争が全土に広がり、軍は非常事態宣言の延長を繰り返している。
総選挙は本当に実施されるのか。私たちは報道官を直撃した。

ミャンマー軍 ゾー・ミン・トゥン報道官:
「ミャンマーの治安情勢は安定していない。政府は総選挙を喜んで実施したいが、それは実現できないだろう。(非常事態宣言も)延長するかもしれない」
抵抗する民主派勢力などを“テロリスト”と呼ぶミャンマー軍。
公正な総選挙を行いたくても“テロリスト”の制圧を理由に実施できない状況にあると自らを正当化することで、国際社会からの批判をかわす狙いがあるとみられる。
結局、軍事政権は8月1日に非常事態宣言を再延長し、総選挙も2024年2月以降に先送りされる形となった。

この日の取材を終え、私たちは車で10分ほどの距離にあるネピドーの刑務所に向かった。
民主化運動の指導者、アウン・サン・スー・チー氏が収監された場所だと聞いたからだ。
ただ、刑務所につながる道路にはいくつものバリケードが設置され、軍や警察が見張り台などから警戒していたため近づくことはできず、車内からカメラを回すのが精一杯だった。
78歳になるスー・チー氏は、クーデター後に汚職などの罪で計33年の刑期を言い渡された。
関係者によると、冷房のない劣悪な環境で拘束されているため、健康状態の悪化が危惧されているという。
連日の猛暑が続くネピドーのこの日の気温は35度を超えていた。

ヤンゴンに戻るために高速道路の入口に差し掛かると、軍の幹部が不気味な笑顔で私たちに手を振ってきた。
この“丁重な見送り”は、外国メディアがネピドーで不穏な動きをしていないか監視・報告するためだったとみられる。