双極症とは、気分がハイになり過ぎたり(躁状態)、落ち込み過ぎたり(うつ状態)を繰り返すという特徴があり、躁状態のときには仕事を頑張りすぎてしまい、うつ状態に落ちる。
安井さんの場合は、躁状態よりもうつ状態の期間の方が長く、うつ症状を改善するための薬を服用しながら、看護師を続けました。

安井裕貴さん
「救急車でどんどん患者さんが運ばれてくる、それに臨機応変に対応しなければいけない。常にアンテナを張っていて、刺激が強い。もともと、そういう現場で働きたいという思いはあったけど、自分には合っていなかったんだと思います。自分がやりたいことと自分ができることは違うんだとその時感じました」

頭痛、ボーっとする、不眠、吐き気、慢性疲労、記憶力低下、光がまぶしい、手先がしびれるなどの身体症状に加え、自信喪失、不安感などの精神症状に苦しみました。
しかし、仕事場では自分が双極症だということを悟られてはいけないという気持ちから、同僚にも打ち明けることはできませんでした。

安井裕貴さん
「注射器を使った薬の配合など、これまで何度もしてきた作業であっても、自信が無かったり、集中力が続かなかったりして、できなくなっていくんです。人との関わりも段々自信が無くなってくるんですよね。当時は、自分自身が双極症だということを周りにも悟られたくないと感じていたのもあって…」
「家族を守らなければいけない、けど自分も双極症でしんどい、相談もできない。家族や友人はいても、心理的に孤独に追い込まれていく。「死にたくなる」っていうのはやっぱりあって、それを妻や両親に言ってしまったこともあります。今となっては申し訳ないと思いますが、それぐらい追い込まれました」