初出場を狙うセンコー、ベアーズなど
総合物流企業のセンコーが、創部3年目でクイーンズ駅伝初出場が濃厚だ。
下田平渚(25)が5000mで15分30秒91の自己新を筆頭に、15分30秒台を3レースでマーク。10月16日の国体成年5000mでは3位と、全国大会上位に食い込んだ。プリンセス駅伝の1区、または3区でも力を発揮するだろう。
竹山楓菜(27)、不破亜莉珠(23)、堀尾咲月(23)、和田優香里、朝比奈亜妃乃(24)らが16分台を何度も出している。竹山はハーフマラソンでも1時間9分台とトップクラスの記録を持ち、10km区間を苦としない。
初出場へ戦力は整った。
クイーンズ駅伝出場チーム数は、MGC措置があるため例年の16チームより多くなると見られている。つまり初出場チームが複数出るかもしれない。センコー以外にも愛媛銀行、メモリード、コモディイイダ、ベアーズなどが、予選を通過すればクイーンズ駅伝初出場となる。
プリンセス駅伝初出場で、クイーンズ駅伝初出場を狙っているのが家事代行サービス会社のベアーズだ。22年に創部し、駅伝メンバーが組めるようになった今季、当初の目標から1年前倒ししてクイーンズ駅伝出場を狙う。
3000mで世界ユース選手権5位など、高校時代に大活躍した向井優香(24)が加入。故障で一度引退し、2年ほどブランクがあったが、9月23日の日体大長距離競技会5000mで16分08秒89まで戻してきた。同大会3000mと5000mにはベアーズ7選手が出場し、5人が自己新を、向井を含めた2人がシーズンベストをマークした。
そこまで高いレベルの記録ではないが、試合出場数自体が少ない。練習のタイムなどから「(5000m)16分15~20秒のゾーンで4人が走っています。(3000m)9分30秒切りが2人いる」と、高柳祐也監督は判断している。
「(MGC措置に関係なく通過できる)2時間20分台、12位以内を目標にやってきました。10日前のロードの練習も予定通りのタイムでできました」
高柳監督の口調は自信に満ちていた。
クイーンズ駅伝へ弾みを付けるチームは?
繰り返しになるが、MGC出場資格のあった選手を擁するチームは、完走さえすればクイーンズ駅伝に出場できる。現実的にMGC1週間後にベストメンバーを組むのは不可能なため、今後を見据えた選手起用をするチームがほとんどだ。
そのなかでもプリンセス駅伝で快走する選手が現れれば、クイーンズ駅伝に弾みが付く。
前回クイーンズ駅伝10位のユニクロは、MGC出場のエース吉川侑美(32)は起用しない。アジア選手権10000m2位の川口桃佳(25)と前回2区区間6位の康本花梨(27)らも、新型コロナに罹患したため出場しない。
だが2区候補の世界陸上1500m代表・後藤夢(23)や、3区候補でクイーンズ駅伝前回3区の平井見季(27)ら人材は多い。2人が区間賞争いができれば、クイーンズ駅伝で上位争いに加わることができる。
ユニバーサルエンターテインメントも、MGC出場の和久夢来(28)は起用しない。昨年のクイーンズ駅伝も新型コロナに主力数人がかかり、ベストメンバーが組めなかった。その状態で11位は健闘だった。
今回は奥村紗帆(25)ら、昨年出場できなかった21年クイーンズ駅伝7位メンバーが起用される可能性が高い。15年世界陸上5000m代表だった鷲見梓沙(27)、駅伝で区間賞を何度も取っている青山瑠衣(34)らもいる。そのうち何人かが復調すれば、クイーンズ駅伝で8位以内復帰のメドが立つ。
天満屋はMGC5位の松下菜摘(28)、6位の谷本観月(28)、7位の前田穂南(27)、13位の大東優奈(25)と、チーム別最多の4人が出場した。欠場した渡邉桃子(25)も出場資格を持っていた。他のメンバーの状態次第で、「MGC選手を1人起用せざるを得なくなるかもしれない」(武冨豊監督)が、その5人は起用しない方針だ。
2月の全日本実業団ハーフマラソン2位(日本人トップ)の𠮷薗栞(24)や、今季好調の立迫志穂(19)が主要区間で区間賞争いをすれば、クイーンズ駅伝で上位争いができる。
ワコールもエースの安藤友香(29)がMGCに出場した(9位)。しかしワコールでは、今季10000mで31分56秒32を出した柳谷日菜(23)がトップレベルに成長してきた。柳谷が3区か5区の区間賞を取れば、クイーンズ駅伝でも安藤と2人、長距離区間が強力チームになる。
MGC特別措置のため例年と雰囲気が大きく異なるが、選手たちの駅伝に懸ける思いは変わらない。今大会で快走することがチームのクイーンズ駅伝での好成績や、自身のトップレベルへの成長につながる。若手や無名選手が強くなっていくプロセスをしっかりと見届けたい。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)