■そして被告に言い渡された判決は

弁護側は量刑を決めるにあたり、下記の通り「考慮すべき事情がある」と主張し、執行猶予付きの判決を求めた。
▶精神的に不安定な状態で夫に叱責され、自殺しようと火をつけた突発的犯行
▶反省した夫が今後も夫婦として生活し、被告を指導・監督していくと約束
▶被告に前科・前歴がない

そして2023年10月12日。検察の懲役5年の求刑に対し、鹿児島地裁は懲役2年6か月の実刑判決を言い渡した。 
             

裁判長:「隣家に燃え移ることはなかったはいえ、近隣住民の生命や財産を害する危険性が高い悪質な犯行」精神疾患などが影響していた点は酌量すべきとする一方で、「夫が更生に協力する旨を述べているものの、被告人の精神疾患などについて理解を深めるには至っていない」などとして、弁護側が求めていた執行猶予付き判決ではなく、実刑判決が相当であると判断した。 

 判決が読み上げられる間、被告の女(47)は、うつむいたままだった。判決が言い渡されたあと、再び拘束される身となった妻を、傍聴席の前方に座っていた夫は、不安そうな表情でじっと見つめていた。

現場には外壁と表札だけが残る(一部加工)

裁判後、事件現場を訪れた。
「どんな家族だったのか?」近隣の住民に聞くと、「奥さんがハンドルを握っていることが多く、夫婦一緒に車で出かける姿をよく見た。普通の家族。仲は良かったように思う」

放火で全焼した家は取り壊され、現場には表札だけが残っていた。