「こんなこと間違っている」古巣の反発
最も強い衝撃を受けたのは、矢田氏が直前まで所属していたパナソニックグループ労連だ。岩脇寛己書記長はJNNの取材にこう答えた。

「今回の補佐官就任は、我々の労働組合活動の延長ではないということはぜひご理解ください。我々が今まで行ってきた活動と、総理補佐官就任はつながっていません。労使関係で言えば、矢田さんは“使”側に行ってしまうという話ですから」
「報道の前日、会社(パナソニック)から連絡がありました。矢田氏本人から事前に相談はありませんでした」
組合は 慌てて矢田氏本人に連絡を取り、「周りに影響が出る。しかもそれが大きすぎる」と総理補佐官の就任を辞退するよう説得したが、矢田氏は応じなかったという。
ある電機連合関係者は、「辛すぎる。こんなことはできれば経験なんてしたくなかった。組合員に対して申し訳ない。こんなことは間違っている」と吐き捨てた。
複数の連合関係者からは「今回は政府・自民党からパナソニック本社に対して打診があった。自分たちは蚊帳の外で、なす術はなかった」という話が聞かれた。
ただ、これに対し、ある立憲関係者は「今頃そんなことを言っても、きっかけを作ったのは自分たちじゃないか」と厳しく断じた。

つまり、3年前の野党合流に反発し、与党に融和的な国民民主党の玉木路線を支えたのは、他ならぬ電機連合を含めた民間産別ではないか、その延長に国民民主党の連立入り交渉や総理補佐官人事があったのではないか、という指摘だ。
今回の件についてパナソニックからは、以下の回答が寄せられている。
「当社グループ社員の矢田稚子さんが内閣総理大臣補佐官という重要な役割を担われることを大変光栄に思います。
国会議員時代も含めたこれまでの経験を生かして大いに挑戦していただきたいと考えており、その取り組みに対して一企業として微力ながら支援してまいります。
総理補佐官就任の経緯に関しては、回答を控えさせていただきたくご理解のほどお願いします」
芳野会長「20年来の同志だが、今後は距離を置く」
この混乱に何を思うか。矢田氏とは「20年来の同志」だという連合・芳野会長はJNNの取材にこう答えた。

「今回、政府から直にパナソニックに連絡があって、矢田さんはパナソニックの社員として受けたということです。なので、連合としてはコメントしません」
芳野会長は固い口調で言葉を選んだ。しかし、堰を切ったように語り出す。
「ただ、連合の組織内議員だった事実がある。今までは、連合の政策が実現できるようにやりとりはしていましたけど、これからは政権の中枢に入ったので、立場は完全に違いますから」
そして、こう言い放った。
「連合としては矢田さんとは距離を置く。矢田さんが政争の具に使われないよう、願うだけです」