デマと虐殺 警察官の証言
千葉県でも多くの朝鮮人が虐殺された。
当時、船橋警察署の巡査部長だった渡辺良雄さんの証言を記録した貴重な音声が残っている。1978年に録音されたもので、話を聞いたのは千葉県内の朝鮮人虐殺を調べている平形千恵子さんらの市民グループだ。
震災翌日の9月2日、船橋署に軍を名乗る人物から電話がかかってきたという。

渡辺良雄さんの証言
軍を名乗る人物「東京方面から来た朝鮮人3000名と砲兵隊とは、江戸川を挟んで交戦中でございます。警戒を要します」
この情報はデマだったが、当初、渡辺さんは信じてしまったという。この2日後、渡辺さんは、署長から命令を受けた。

「朝鮮人が軍に連れられ船橋にくるので、引き継いで保護せよ」とのことで現場に向かったが…
渡辺良雄さんの証言
「『この人たち(朝鮮人)を我々にここで渡してくれませんか』」
この申し出に対し、軍は…
渡辺良雄さんの証言
軍「この人たちは船橋の自警団に引き継げと、上司から我々は命令を受けてきたんだ。それを今、あなた方に渡すわけにはいきません」
渡辺さんはこう言い返した。
渡辺良雄さんの証言
「自警団に引き渡せば、全部殺されてしまうぞ。だから我々にここで渡してくれ」
軍との押し問答が続く中、朝鮮人の一団は自警団に発見されてしまったという。
渡辺良雄さんの証言
「(自警団は)周りを見ながら、どこに朝鮮人がいるか探したわけだよ。それをやるのに、誰かが鐘を叩いたわけ。音がしましたよ。人が来た来た、たまげたよ」
渡辺さんは署長に報告するため、警察署に戻り、再び現場へ向かうと…
渡辺良雄さんの証言
「大きな声が『万歳万歳』ってやってるわけ。(死体の数が)53人ですよ。死体処理をどうするかという問題になった」
渡辺さんは、デマの恐ろしさについても語っていた。

渡辺良雄さんの証言
「こういう流言飛語という体験というのは、何か大きな問題が起こった時、ガタガタになる恐れがある、みんなは胸の中に流言飛語というのは恐ろしいものだということを一つ胸の中に入れておいてもらいたい」