来年3月の大統領選挙を前に、9月10日からロシアの統一地方選挙が始まる。その前にロシアが不当に占拠している東部4州ではすでに投票が行われているという。全国で選挙のモニタリングや監視員の教育をしている独立系選挙監視団体によれば、ロシアの選挙の不正については枚挙にいとまがないという。なお、この監視団体のメンバーの自宅などは「好ましくない組織に関する法律」によって家宅捜索が行われるなど当局からの「いやがらせ」も行われているという。

候補者の名前すら分からない

ロシア北部には8月20日から投票箱が届けられた。その様子を写した写真にはヘリコプターや船、そしてトナカイの群れも…ロシアの国土は広い。

そしてロシアの東部と南部の4州ですでに始まっているというロシアの統一地方選挙の投票。しかし普通では考えられえない状態で投票が行われているという。

独立系選挙監視団体「ゴロス」 ダビド・カンキヤ氏
「投票所の数、その有権者の人数は公開されていません。候補者名をネットで探さないと分からないんです。候補者名ですよ?未確認の場所で不特定の人が参加する選挙であり、候補者名でさえ、はっきりしないのです」

そして謎なのは候補者だけではないのだとも言う。

独立系選挙監視団体「ゴロス」 ダビド・カンキヤ氏
「(4州では)有権者の定義でさえ、はっきりしないのです。また、どのような身分証をもって投票できるのか、という問題もあります。選挙の流れ、候補者に関する情報へのアクセスはどうなっているのか分かりません。その選挙を評価するための明確な基準がないのです」

投票率100パーセントを超えることも…

この監視団体が過去に集めた監視カメラの映像には選挙の不正の「証拠」が残されている。

2021年、ロシア、ガバルダ・バルカル共和国の投票所の映像。投票所の治安を預かる警察官が映っている。しかしこの警察官…他にも投票する人がいる中で投票箱に次々と投票用紙を入れていく様子が映し出されている。

さらに2016年。こちらはタタルスタン共和国。

選挙監視のために座っている人たちが投票所から誰もいなくなると、やおら立ち上がり投票箱の周りに集まってくる。そしてよく見るとひとりが腹から投票用紙の束を取り出し、フタを開けて中に入れる姿が…

独立系選挙監視団体「ゴロス」 ダビド・カンキヤ氏
「ロシアでは(選挙結果を)偽造するためのシステムが存在します。我々の評価によると、前回の大統領選、そして連邦レベルの選挙の時に1000万人分の投票結果が偽造されました。これは全投票者の約15%です。恐ろしい数字ですね。15%とは、6人に1人の投票結果が偽造されたということです」

こうした不正は政府が望む得票率を役人たちが達成するためのやり方なのだという。

独立系選挙監視団体「ゴロス」 ダビド・カンキヤ氏
「ロシアの行政マシーンはどんな目標数値であっても達成することが出来ます。一部の地域では投票した人数は有権者の数を上回るという事例がありました。例えば、2011年の下院選の時に、モルドヴィアという地域では投票率は104%でした。投票した人数は選挙区の有権者の人数を上回ったのです。行政のマシーンは頑張りすぎて、有権者数を上回る結果を公開してしまったのです。これは単独の事例ではありません。目標値が80%であれば、その数値は達成されるのです」

さらに最近は、あるシステムが不正をやりやすくしていると言います。

独立系選挙監視団体「ゴロス」 ダビド・カンキヤ氏
「今回の選挙の主な問題は、ロシア各地で電子投票システムの導入が広がっている所にあります。残念ながら、ロシアの選挙当局の評判を考慮しても、
これまでの選挙結果は有権者の意思を反映しておらず、国際基準に合致していないという経緯を見ても、電子投票は選挙不正のツールになると疑う余地はありません」

来年の大統領選でも、同じような不正は起こるのでしょうか。

独立系選挙監視団体「ゴロス」 ダビド・カンキヤ氏
「前回の大統領選ではプーチン氏が(得票率)70%以上獲得したので、今回はそれを下回る結果になったら、彼の政策を国民が支持していないということになり、官僚もエリートも社会もそれをよく思わないでしょう。だから、好ましくない候補者が立候補できないようにして、メディア空間をコントロールし、プーチン大統領の再選を問題視する人を黙らせるための対策が取られているのです」

(BS-TBS「報道1930」9月4日放送より)