後を絶たない民間機の撃墜…背景には国家間の緊張
それからさらに20年がたった今。航空機の航法技術は進歩し、飛行中の航空機の位置や高度は、GPSと通信衛星によって地上からも常に把握できるようになりました。しかし残念ながら、民間旅客機が誤って撃墜される事件は根絶されていません。
1988年7月、ペルシャ湾のホルムズ海峡に展開していたアメリカのイージス巡洋艦が、イラン航空655便をミサイルで撃墜、290人が死亡しました。旅客機をイラン軍の戦闘機と誤認したのが原因でした(※4)。
2014年7月には、ウクライナ上空でオランダ・アムステルダム発クアラルンプール行きのマレーシア航空17便が、ロシア製の対空ミサイルで撃墜され、298人が死亡しました(※5)。オランダ政府はロシア人など4人の容疑者を特定しましたが、撃墜に至る真相が明らかになる気配はありません(※6)。
そして2020年1月には、ウクライナ国際航空752便が、イスラム革命防衛隊(イランの軍事組織)が発射したミサイルによって撃墜され、176人が死亡しました。アメリカの巡航ミサイルと誤認されたのが原因でした(※7)。
これらの事件に共通しているのは、関係する国が軍事的に緊張状態にあり、十分な確認がなされないまま、攻撃が行われたという点です。
緊張が不安を生み、不運の連鎖によって最後の引き金が引かれる。
国どうしの緊張によって、関係のない人々の命が理不尽にほんろうされる現実は、40年前も今も変わっていません。