■児童養護施設の子どもたちの現状、ATSUSHIが来て変わったこと

子どもたちにプレゼントした赤いピアノを弾くATSUSHIさん


児童養護施設は2021年現在、全国に612か所存在し、約2万3000人の子どもたちが暮らす。東大阪市の児童養護施設「若江学院」では、入所理由の約7割が虐待だという。子どもたちとの接し方について、若江学院の職員は「職員の振る舞い方や言葉遣いによっては、虐待を受けていた当時の嫌な記憶がよみがえって子どもがパニックを起こすこともあるので、職員たちは細心の注意を払っている」と話す。

ATSUSHIの訪問は、子どもたちのためではあるが、職員に対しての労いの意味もある。ATSUSHIはこの施設をこれまで3度訪問している。

「一回きりじゃなくて『また来るね』という言葉を残して(約束して)いるので。ちょっと歳の離れた近所のお兄ちゃんとして接するように意識していますね」

この春に施設を卒業した子どもは、ATSUSHIが何度も会いに来てくれたことで、日常に希望を持てるようになったという。

「毎日が楽しくなりました、学院に帰って何か困ったことがあればATSUSHIさんが来てくれるっていう感じがします」

職員も施設を繰り返し訪れるATSUSHIの行動に驚きを隠せない。

「有名な方が1回だけ施設を訪れてくれることはある話なんですが、継続して来てもらえることはほとんどない、継続して来てもらえていることを子どもたちも特別にしてもらっていると感じていて、私たち職員も純粋に嬉しい」

社会貢献活動は公表することによって、“偽善”ではないか、との声があがるリスクも存在する。以前は、ATSUSHIも活動を公表することへの戸惑いもあったというが、今は考えが変わってきたと話す。

「自らの考えが整理できているからこそ、支援活動を隠す負い目がなくなってきました。誰かの人生を変えられるなんて大げさなことは思っていないんですけど、1人でも喜んでくれるなら続ける意味があるし、多くの人に知ってもらう意味はありますね」

ATSUSHIは今後も活動を続けていくという。

「悲しみがそこにある限り、継続していくことがこの活動の意義であり、自分の生き方です」