■ATSUSHIが考える子どもたちへの“愛”

初めて児童養護施設を訪れた際には戸惑いも大きかったそうだ。
「どういう風に接していいかもわからなかったですね、ただ会ってみると凄く、無邪気な笑顔とか、人が普通に感じる喜びとか楽しさとかそういうものは変わらなかった」
訪問を重ねるうちに子どもたちへのアプローチの仕方も確立されてきた。物心つく前の幼い子どもたちに対しては、体を寄せて抱きしめてあげたり、手を握ってあげたり、時にはトレードマークのサングラスを子どもたちにかけてあげたり…触れ合いを大事にしている。それに対し高学年の子どもたちは、思春期に入っている子も少なくないため、日々の悩みや将来の夢について話を聞くことを大事にする。年齢に応じて愛情表現を変えていくのATSUSHI流だ。
「優しく愛で対応してあげたいですよね」
児童養護施設への訪問を続けることで気付いたこともある。とある施設では、ATSUSHIと握手した際に、必要以上に手を力強く握ってくる子どもがいることを感じた。過度なスキンシップ。幼少期に愛情を感じられないまま大きくなっていくと、対人関係などに問題を抱えるケースがあるという。ATSUSHIは施設にいる子どもの「愛」の受け皿を、コップに例えて次のように話している。
「自分なんて生きている意味がないとか考えるようになっていき、次第に承認欲求のコップが壊れてしまうのだと思う」
「最初はおちょこぐらいかもしれないですけど、少しずつ人の気持ちを素直に受け取れる器を形成してあげられたら、今度はそのコップを大きくしてってあげて…愛を感じられるようにしてあげることができたら、本当に理想的ですね」
子どもたちに自ら話しかけ、話を聞く。そして、子どもたちの行動を認めてあげ、承認する。大人からの愛を受けることで、子どもたち自身も愛の与え方がわかるようになり、それが次第に悲しい事件の芽を摘むことになるとATSUSHIは考える。
「訪問した1日が思い出になって少しでも子どもたちの生活の希望になったらいいですね」