■あとを絶たない子どもが被害に遭う事件 “愛”を届けるEXILE ATSUSHI

「いまの日本の子どもたちの現状を知ってできることをやっていきたい」

そう語るのは、国民的なボーカリストとして活躍中のEXILE ATSUSHI。2019年から児童養護施設への支援活動を続けている。児童養護施設には、虐待や親から子育てを放棄された子どもたちが暮らす。親が子どもに危害を与える事件が後を絶たないなか、厚生労働省によると、2020年度、児童相談所が虐待の相談で対応した件数は、全国で20万件を超え、過去最多となった。施設への訪問を続ける中で、ATSUSHIは何を感じているのか。

■EXILE ATSUSHI 刑務所・少年院を訪れ導き出した、いまできること

矯正支援官としての活動を行うATSUSHIさん


EXILE ATSUSHIがアーティスト活動とは別に取り組んでいるのが社会貢献活動だ。2015年、法務省から矯正支援官の仕事を委嘱されたことをきっかけに、刑務所や少年院を慰問し、受刑者の更生を支援している。初めて刑務所を訪れ、受刑者たちの前に立ったATSUSHIは当時をこう振り返る。

「踏み入れたことのない場所で少し現実感もなかったですし、物凄いプレッシャーでしたね。始めた当時は使命感にかられていて、全員を更生させなきゃと思っていました。どんなLIVEよりも緊張して足ががくがくに震えていました」

初めはどんな言葉をかけたらいいのか分からなかったという。

「もし僕が見当違いのことをしゃべってしまえば(受刑者から)なに言ってんだと思われてしまうこともあるわけで。ただ被害者がいる以上、受刑者の方々に敬意を表すのもおかしいし・・・」

戸惑うことも多かったというが、心からの、誠意ある言葉で受刑者に語り掛けようと決意した。そして、慰問を続ける中で届いた受刑者からの感想を目にしたことがきっかけで、考えも変わっていく。

“ATSUSHIが言うように改心してみようと思う”
“出所してATSUSHIのLIVEに行こうと思った”


「僕が話すことで誰か1人でも感じとってくれる人がいるなら、活動している意味があるんだと思うようになりました」

大人になったら、いつかは社会貢献活動をしたいと考えていたATSUSHI。
初めて少年院を慰問した際には、子どもたちの未来を感じたという。

「(少年らは)罪を償う時間に加えて、更生したあとの人生が待っているということを感じました」

法務省によると、2016年に出院した少年(2750人)のうち、再犯して5年以内に少年院や刑務所に入った少年は20%を超えた。子どもの犯罪の延長が大人の犯罪に繋がっていくのでないか。次第に、ATSUSHIはどうしたら子どもたちによる悲しい事件の芽を摘むことができるのかを考えるようになっていく。
そんなATSUSHIの心を動かしたのは、ある少年院を訪れた際に聞いた「少年犯罪の7割から8割は家庭環境に問題がある子どもたち」という言葉だった。

「愛情が足りない環境で育った子たちは、愛することの意味を知らずに育ってしまうのではないだろうか…」

親と暮らせない子どもたちのところに行って「愛」を届ける。ATSUSHIは2019年に児童養護施設への訪問を始めた。2020年にはYoutubeチャンネルを開設し、広告収入を子どもたちの支援に充てることを発表。コロナ禍で訪問が難しい時には、巻きずしなどの食べ物を送ったり、リモートで子どもたちと話をしたりするなど、状況に応じてできることに取り組んでいる。

「僕のやっていることで愛の欠片でも感じてくれたらほんとやっている意味はありますね」