■海上輸送の保険をかけさせない…

ロシアのタンカーを止めることはできても、制裁に参加していない船籍の船はいくらでもある。しかし、海上輸送の際、事故にあった時などのためにかける保険を止めてしまえばタンカーは実質操業できない。

そこでイギリスとEUはロシア産原油を運搬する海運会社の保険引き受け禁止を打ち出したのだ。


東京大学公共政策大学院 鈴木一人教授
「タンカーは事故などで油が流出したりしたら莫大なお金がかかる。保険無しでタンカーを動かすのは自殺行為。だから保険を止めるのは効果的です。(中略)ロシアの保険会社は小さいので、もし事故があれば自社だけで賄えないからヨーロッパの大きな保険会社に保険をかけているわけです・・・」

海運の世界では常識だが、タンカーなどの保険を引き受ける保険会社は、何かあった時は莫大になる保険金を自社だけでは払えない。だから世界でも有数の“再保険会社”に加入している。保険会社は世界どこにでもあるが、この再保険会社となると多くはない。中でも大手10社のうち9社が西側諸国だ。特に海運保険ではロイズで知られるようにイギリス抜きには語れない。この大手がロシア産原油を運ぶ船の保険は引き受けないとなると制裁に参加していない国もロシアの原油を運ぶ手段がなくなる。これはかなり有効な制裁だという。

東京大学公共政策大学院 鈴木一人教授
「イランにもEUが独自制裁と言うことで、イラン産の原油を運ぶタンカーの保険を引き受けないということをやった。これでイランの原油を運ぶタンカーが物凄く少なくなって、イランの経済が立ち行かなくなり、最終的に核合意につながった」

兵頭慎治 防衛省防衛研究所政策研究部長
「プーチン大統領もこのあたりは認識しているようで、最近はイタリア、フランス、ドイツといったどちらかというと早く停戦協議に応じて終戦したほうがいいと考えている国の首脳と電話会談している。その際にロシアが穀物を輸出するから制裁の解除や緩和をと発言している。いまの制裁でも苦しいのに、さらなる追加制裁に踏み切ってほしくないということを間接的にですが表現している」