『マイナンバーの大臣会合が延期になった』
岸田総理の記者会見が開かれる4日前の7月31日。政府関係者から連絡が入った。
「8月1日午後に総理と関係大臣の会合がセットされました」
近く総理がマイナンバーについて国民に説明するとされているなか、関係大臣と会合するということは、政府の方針が最終調整に入ったことを意味する。ところがその連絡から数分後、再び携帯電話が鳴る。
「と思ったら、延期になりました...」
わずかな時間で一転した総理と大臣の会合。異例の事態で、調整が難航しているのは明らかだった。
ある自民党関係者はその理由をこう語る。『官邸の木原官房副長官が来年秋の保険証の廃止期限を延長する方向で、政府・与党内に根回しを始めていた。でもその方針に加藤厚労大臣と河野デジタル大臣が断固反対したんですよ』

官邸が“保険証の廃止期限延長”に傾いたワケ
総理側近の木原官房副長官が根回しに回るなど、総理官邸が今の保険証の廃止延期に傾いた背景には『このままでは世論が持たない』という危機感があった。マイナンバーをめぐる相次ぐトラブルで、報道各社の世論調査では内閣支持率が軒並み低下。JNNの世論調査でも来年秋に保険証を廃止し、マイナンバーカードに一体化する政府の方針について「延期すべき」「撤回すべき」という意見が合わせて73%を占めた。
ある政府関係者は、『岸田さんも木原さんも、世論を押し切ってまで、マイナ保険証にこだわるのはコスパが悪いという雰囲気だった』と官邸の様子を語る。
岸田総理も周囲に「デジタル化やマイナンバーカードの普及は絶対にやる。ただ、手法については考えなければいけない」と語り、一体化の必要性は認めつつも、保険証廃止については延期も視野に入れていた。
官邸が保険証の廃止延期に傾くなか、異論を唱えたのが加藤厚労大臣と河野デジタル大臣だ。特に強く反対した加藤大臣の心境を、関係者はこう解説する。
『厚労省からすれば、官邸主導でマイナ保険証を始め、ただでさえ巻き込まれ事故なのに、保険証の廃止延期をするとなれば、また国会で法改正をしないといけない。その時に国会答弁で矢面に立たされるのは、納得いかないでしょう』
河野デジタル大臣も『厚労省、総務省と相談の上、総理の了解も得て決めたことだ』と、今の方針を維持すべきと繰り返し訴えた。
実際に保険証の廃止を延長するためには、今年6月に成立したばかりのマイナンバー関連法を再び国会で改正する必要があるが、「それだと秋の臨時国会がマイナンバー国会になってしまう」(自民党幹部)との懸念は与党内にも広がっていた。
