「お父さんのことはずっと忘れません」
砂に映る、無数の模擬銃の影…。灼熱のなか、子どもたちが黙々と号令に従い行進していく。そのすぐ隣では、覆面をした戦闘員が目を光らせる。少し離れた丘の上には、仰々しい軽機関銃を持った者の姿も。目が覚めるような青空と、戦闘員が着用する迷彩服とのコントラストがくっきりと浮かび上がる。

須賀川拓 記者
「本物の銃ではないですが、顔にペイントを塗って。小学生くらいの小さな子どももいます」
一見、ボーイスカウトのような雰囲気が漂う。しかし、次の瞬間・・・。
「イスラエルに復讐するぞ!」
子どもたちの掛け声が響き渡る。空気が乾いているせいか、彼らの声の振動を肌にピリピリと感じる。

TBSテレビの戦後78年特番「つなぐ、つながるSP 戦争と子どもたち 2023→1945」(8月12日(土)午後3時30分放送)で今回、須賀川拓記者が取材したのは、中東・パレスチナ自治区ガザを拠点とする武装勢力「イスラム聖戦」の“サマーキャンプ”だ。
この日集まったおよそ700人の子どもたちは、銃の扱い方などを学ぶ2週間の戦闘訓練を終えたばかり。パレスチナの旗が掲げられた広場で、訓練の終了式が行われていた。
会場に展示されていた“模擬ロケット弾”の近くにたたずむ、1人の男の子がいた。名前はムハンマドくん。13歳だというが、体つきは小学生くらいに見える。彼の肩には、模型ではなく本物のアサルトライフルがかけられていた。

ほかの子どもたちと一緒に整列することもなく、もの悲しそうな表情で式典を眺めるムハンマドくん。記者が話を聞くと、表情は一変した。
ムハンマドくん(13)
「キャンプに参加して殉教者たちが流した血の道をたどるのです!」
殉教者、それは彼の父親のことだ。
今年5月、ガザを轟音と地響きが襲った。イスラエル軍による急襲作戦だった。5日間続いた武力衝突で、子ども7人を含む33人が死亡。その中に、ムハンマドくんの父親、「イスラム聖戦」のアハメド・アブ・ダッカ司令官も含まれていた。イスラエル軍は、アブ・ダッカ司令官が、ガザからイスラエルに向けて発射されるロケット弾による攻撃を指揮していたと主張している。
実際、ガザからは多数のロケット弾が無差別に放たれていて、人権団体は戦争犯罪だとして糾弾している。しかし、イスラエルによる長年の封鎖によって厳しい生活を余儀なくされている子どもたちに、こうした声がどこまで届いているかはわからない。

ムハンマドくん(13)
「お父さんのことはずっと忘れません。すべての亡くなった人たちのために攻撃します。そしてパレスチナを解放します。東から西まで、南から北まで、海から川まで…。イスラエルは僕の少年時代を奪いました。そして家族を殺害し、多くの子どもたちが孤児になりました。それでもまだ殺戮を続けているんです」
ムハンマドくんは、身振り手振りでイスラエルへの憎悪を記者にぶつけてきた。わずか13歳にして、彼は戦うことを決めていた。