―具体的な指示の立証は難しい?

山岸久朗弁護士:非常に難しい。ホームページでビッグモーターが反省を示して謝ったというふうに報道されていますけれども、実際には除草剤を撒いたことによって結果的に枯れてしまった、ごめんなさいと書いてあるので、故意を否認しているんですね。ところが器物損壊とか詐欺っていうのは過失犯がなくて、故意でしか立件できませんので、あれは本当は否認しているんですね。罪を認めたような謝罪文じゃないんですよ。そこを乗り越えて検察が立証するというのは非常にハードルが高い。(街路樹を枯らしたのは)主に考えられる罪は器物損壊罪にあたる。市区町村の所有物ですので、勝手に枯らすというのは器物損壊罪になります。ただ、これも故意が必要なのですね。

―故意の立証も非常に難しいと。これをどう立証するかが今後のポイントになる?

山岸久朗弁護士:そうですね。刑法犯で立証しようと思うと、検察官は相当難しいハードルに迫られる。ただし民事の損害賠償、この場合は過失でもできる。過失自体は認めていますから、会社に対する損害賠償請求はできる。ただ、現場の弁護士の声として言わせていただければ、街路樹1本あたり5万円とか7万円という報道が出ておりますので、それを会社に対して損害賠償請求しようと思ったら、弁護士に頼むのにやっぱり20万円30万円と裁判費用がかかるから、そうするとやはり赤字になってしまう恐れがあるんですね。それでもやるかどうかというのは各市区町村の長が、「やっぱりこれ天網恢恢疎にして漏らさずとして、許しておくことはできない」という正義感ですね。もしくは政治的パフォーマンス。そういうところでやるかどうか、踏み切るかどうかというところに私は注目しています。

―ここも具体的な指示が必要だということ、証明するのが難しい?

山岸久朗弁護士:会社に対してはできると思います。勝つと思うんですけども。社長・副社長個人に対して損害賠償を請求しようと思ったら、具体的に指示していたというところが刑法と同じく要るので、それができるかどうかというところは問題になります。大きな争点になりますね。

―副社長のものすごいプレッシャーがあってやってしまったみたいなことでは通用しないと。具体的なものがないと。中野教授、こういった除草剤で枯らすというのは自治体のものですからね?

中野雅至教授:プロの弁護士がおっしゃるからそうなんだろうけど、やっぱり国民はなかなか納得しづらいね。国策捜査じゃないけど、なんかやらないと納得しないという雰囲気になってきたらやるのかなと思うし。でも社長はわからんけども、副社長って懲戒処分というか降格処分を含めていろんなことやっていると報告書にも書いてあって、副社長の方はどうなんですかね、立件は法的に難しいんですか?

山岸久朗弁護士:難しいハードルは実際ありますけれど、今おっしゃった通り、もう検察・警察は世間がこれほど騒ぐと、やっぱり引っ込みがつかないので、やらざるを得ないように追い込まれていくとは思いますね。そしてまたやってほしいです。