―そんな前社長・前副社長ですけども、今後、責任追及はどこまで可能なのか。親子は7月26日付ですでにビッグモーターの社長・副社長を辞任しています。責任を取って辞めますという形です。しかし、ビッグモーターの株を100%所有する資産管理会社「ビッグアセット」の取締役は継続しているということ。これは責任を取ったことになるのですか?
山岸久朗弁護士:全くなってないですね。会社は誰のものかって言ったら株主のものなんですよ。取締役とか代表取締役というのは、株主がいつでも解任できるので、専任も。決定的な権限を持ったままでは全く責任を取ったことにはなっていない。まだこの親子の影響力が及んだままです。
―修理した車を傷つけ保険金を水増し請求の件、これに関しては考えられる罪は器物損壊罪と詐欺罪の2つだということですね。
山岸久朗弁護士:その通りです。車を傷つけるのは器物損壊罪ですね。それをもって修理代金を損害保険会社に請求する、これは詐欺罪です。刑法の中でも最も重い方の罪です。
詐欺罪も器物損壊罪も「故意」立証のハードルが高い
―詐欺罪は10年以下の懲役となっています。では、この2つの罪を2人に問うことができるのかという話なのですが、実際に犯罪行為を行った正犯は社員本人になってしまう。車を傷つけた本人が正犯になるので、前社長・前副社長はどうなるかという話ですね?
山岸久朗弁護士:実際には、やった本人が正犯なので、社長・副社長には責任は及ばないというのが実態、原則です。ただし、例えば暴力団なんかのケースで、末端の組員が拳銃を所持していたときに「組長が指示して持たせていたんだ」ということで、共謀共同正犯という理論がありまして。共謀していたと、その罪について。それと同じように前社長・前副社長の指示によって、器物損壊だったり、詐欺だったりをしていたということが立証されるならば、本人たちも正犯として逮捕、また起訴される可能性はあります。