「感情と法とは必ずしも相容れない」

袴田ひで子さんは、有罪立証という検察の方針を聞いた後の記者会見では「検察庁だからとんでもないことをするとは思ってました」といって笑いを誘った。それほど検察にあきれている。検事出身で衆議院議員を3期10年務め刑事司法の問題にも取り組んだ菅野志桜里弁護士は言う。

元衆議院議員 菅野志桜里弁護士
「あらゆる証拠評価が第三者による捏造であることを示している。実際、珍しいですよね、裁判所が捏造の可能性を明言するって。これだけみじめな証拠関係で有罪立証に固執する、この検察の本質的な組織のロジック、ここを解明して改善する必要がある」

ジャーナリスト 鎌田靖氏
「私もそうですが多くの人が、“袴田事件ってもう無罪で決まったんじゃないの”って思ってる。でも検察は検察で“終わってない”と。ひで子さんは“検察の都合”と言いましたけど、言葉は悪いですけれど“検察がメンツにこだわってる”っていう言い方をせざるを得ない…」

一般的な見方をすれば、一人の人間の人生の殆どを奪い取ってしまうような扱いをした上に、まだまだ時間をかけて争って行こうとする検察の方針は理解に苦しむ。これまで死刑確定後、再審が認められたケースが4件あるが、いずれも時間はかかったが無罪判決だった。しかし、この4件でも今回と同様、再審において検察は有罪を主張している。有罪率99.9%の日本の検察。なかなか一般人には理解できない検察ならではの理論と精神。全く違う意見の二人の元検察官に聞いた。

元検事 大澤孝征氏
「検察から見て有罪の立証ができるまできちんとやったかっていうと今回についてはやってないんじゃないかと…。検察の立場として尽くすべきを尽くしていないと判断したから有罪立証すると。(中略~袴田さんの立場については)感情の問題でしょ。(何十年も拘束されて、80歳過ぎて)気の毒じゃないか、可哀そうじゃないかという感情からきてるわけです。感情と法とは必ずしも相容れない。検察が自ら可哀そうだから、時間がかかるから辞めましょうっていうことはやっちゃいけない。そういう配慮することも検察として法の良心に従ってやってることなのかってなっちゃう」

一方、袴田さんの有罪にこだわるのは問題だという立場に立つ元検事もいる。