「知らなかった」繰り返す ビッグモーター社長
山本 恵里伽キャスター:
2時間以上に及んだ会見の中で、兼重社長が再三口にしていたのが「知らなかった」という言葉です。
ビッグモーター 兼重宏行社長
「不正請求問題は、板金塗装部門単独で他の経営陣は知らなかった」
「天地神明に誓って知らなかった」
「損保会社も不正は知らなかった」
「副社長がパワハラをしていたのは知りませんでした」
また社内で「@(アット)」とよばれているノルマに関しては「何を勘違いしたのかわからないが運用」されていた。そして、不正はいつ認識したのかについては「6月26日の特別調査委員会の報告書を受けて、本当に耳を疑い愕然とした」、つまりこの報告書が出る前までは、不正は知らなかったという認識を示したわけです。
小川彩佳キャスター:
あくまでも「知らなかった」という姿勢を連発したわけですけれども、だとしたら、知りえたのではという疑念の渦中にいる副社長に会見に出席していろいろ説明していただきたかったなと感じます。
データサイエンティスト 慶応大学医学部 宮田裕章教授:
もう一つの観点は社長が「知らなかった」ということよりも「気づけなかった」ということが、コーポレートガバナンス上、課題なんですよね。責任は重いと言えます。どのような組織・規模なのかというのはこれから明らかになるとは思うんですが、いずれにせよ不正行為がこれだけ計画的に、そして仕組みを悪用し続けたこと自体っていうのはやはり許されないことですし、これをどうやって改善するかですよね。
今回、社長、副社長は退任しましたが、この2人は持ち株会社で、全ての株を持っているので、本当にこの状況を改善することができるのかどうかというのは、やはり注視していかなくてはいけないのかなと思います。
山本キャスター:
では、今回の会見どのように受け止められたんでしょうか?
九州エリア元社員「報告書が出るまで全く知らなかったというのはあり得ない」
整備部門元責任者「知らないと言ってしまうのは社員を守ろうという気質がないのでは」
現役社員「実権を握っていた副社長は知らないはずがない」
専門家はどう見たのでしょうか?リスク管理の専門家、エス・ピー・ネットワーク石原則幸専門研究員は「『知らなかった』『現場に入っていればよかった』は後付けの論理」
そして、企業統治の専門家、千葉商科大学・磯山友幸教授は「経営者の顔色だけを見て、忖度する雰囲気が組織内に出来上がっていた印象」と話しています。
さらに、経済同友会の新浪剛史代表幹事はこのように指摘しています。
「上層部に仮に(報告が)上がっていなかったとしたら、それもまた大きな問題」
「悪いことこそトップに上がることが組織としてあるべき姿」
小川キャスター:
厳しい声が相次ぎましたが、同じような不正が生まれないためには、何が必要になってくるのでしょうか。
宮田教授:
知識に差があり、そしてブラックボックスになってるような状況では、今回のケースだと車検ということもそうなんですが、腐敗というのが生まれやすいんですよね。例えば医療の場合だとセカンドオピニオンを頼ることができたり、あるいは第三者のチェック団体などをたてていくということなんですが、今後、車検というこの業界においても、プロセスを誰かが追跡できるようにする、あるいはチェックを第三者がして、保険会社かもしれないんですが、プロセスを確認する。こういった仕組みそのものも作っていかなくちゃいけないのかなと感じます。
小川キャスター:
そして今回の会見で社長は謝罪をして辞任を発表したわけですけれども、これで幕引きとは当然いかないことは明白なわけですから、真相究明に尽くす必要がありますね。