「あの世で会おう」男が面会の最後に記者に語った言葉

そして、藤原被告は机に手をついて目を閉じ、10秒ほど沈黙した後、より落ち着いた声でこう話し始めた。

藤原被告
「こうやって心の中でね、逮捕されてから200日くらいになるけど、毎日祈っています。反省しても反省 しても反省してもどうしようもない・・・。介護を40年やることは普通のことだよ。それを最後に殺してしまった。大ばか者がやることですよ」

私は返す言葉が見つからず、面会室はしばらく静寂に包まれた。
そんな中、刑務官から合図が…。

刑務官
「まもなくです」

まだ想定していた質問のほんの少ししか聞けておらず、焦った私はとっさにこう切り出した。

記者
「また面会に来てもいいですか?」

藤原被告は少し考え…。

藤原被告
「俺も年だし、もう来なくていいよ。あの世で会おう」

こう言い残し、部屋を去った。

この4日後、私は法廷で藤原被告に再会した。
裁判長から「最後に言いたいことはあるか」と聞かれた藤原被告は証言台に手をつき、声を絞り出すようにして叫んだ。「照子、申し訳ない」。嗚咽混じりに泣きながら。
その瞬間、ちょっとしたざわめきと共に、法廷内にいた全員が悲しさに包まれたように私は感じた。

裁判は結審した。

40年の介護の末に自ら妻に手をかけた藤原被告に対し、検察側は懲役7年を求刑している。
判決は7月18日に言い渡される。

(TBSテレビ社会部 桝本康平)