多くの人と関わる中で起きた変化

事件から7年という時間が経つ中で、
一矢さんの表情も、少しずつ変わってきました。

事件直後の1年ほどは、不安げな表情を見せる場面もありましたが、いろんな人と触れ合ううちに、初めて会う人にも、大勢から見られていても、人なつっこく笑顔を見せるようになりました。

取材クルーと手遊びをして楽しむ一矢さん

アパート暮らしを始めて3年。
今、一矢さんは、重度訪問介護制度を利用し、大坪さんの他にたくさんの介護士に支えられながら、“一矢ん家”で過ごしています。

平日は生活介護事業所に通い、作業をしたり、散歩をしたり。

土日は一矢さんの希望でドライブをしたり、ご飯を外で食べたり、両親の住む家に遊びに行ったりしています。

飛行機移動で同乗する大坪さん(左)と一矢さん

他県での宿泊行事や、飛行機に乗ることも経験し、大学の授業に講師として呼ばれるなど、交流の幅を広げ、多くの人と関わってきました。

大坪さんは、近所に住む人やよく行く店などに一矢さんのことを理解してもらおうと、手作りの「かずやしんぶん」を配ったり、SNSに一矢さんの日常を投稿したりすることで、この暮らしについて知ってもらおうと発信を続けています。

最初は、きっと理解してもらえない、と思い発信することに抵抗があった大坪さんですが、SNSの投稿を見た当事者の母親から相談を受けたり、「一矢さんの姿を見て、将来わが子も自立した暮らしができるという希望になった」といったメッセージをもらったりするなど、反響に驚いたと言います。

障害者の生活の情報が不足していたことを実感し、当事者の切実な悩みを改めて知った大坪さんは「発信しなきゃだめだ」と考えを変えました。