「僕らが思ってる以上に深い傷を受けている」

初めてのアパート暮らしは想像以上に順調に進みましたが、決して良いことばかりではありませんでした。

介護士との関係が深まってくると、一矢さんが自分の要求をどんどん出すようになり、自己主張が強くなっていったと言います。

スーパーで精算機を操作する一矢さん

「今まで表現しなかったようなことをだんだん表現するようになるわけですよね。不機嫌なときは、物にぶつけるということもするようになるし」(大坪さん)

一矢さんの変化は、言動だけでなく、身体の反応としても表れました。
今年4月、突然身体が動かなくなり、がたがた震える発作が6年ぶりに起きたのです。

さらに、大坪さんがドキッとしたできごとがありました。

「おなか痛い」と言い始めた一矢さんが、「ドバっと血出る?」と聞いてきたと言うのです。
怒りとも悲しみともつかない、叫びのような訴えだったと言います。

「やっぱり僕らが思ってる以上に深い傷を受けているんだと思います。もう時間は経ったんだから傷もだいぶ癒えてんだろうなと思ったらとんでもない。こっちは身を引き締めて、受け止めていかないといけないなとすごく思いますよね」