行き過ぎた円安は好ましくない

日銀は、円安は総じて企業収益の押し上げ効果があるので、適度なものであれば日本経済にプラスだと考えていると思います。

しかし、1ドル=145円といった急激な円安は、コストプッシュ型インフレを加速し、所得・消費の足を引っ張りかねないので、決して好ましいとは考えていないでしょう。

また、物価高に神経を尖らせる政権から、円安是正にむけた圧力がかかることも予想され、行き過ぎた円安は好ましくないと考えているはずです。その意味で、内田副総裁のインタビューは、絶妙のタイミングでの「口先介入」になりました。

植田日銀の真価を決める7月会合

さて、極端な円安がやや是正され、超円安がもたらす政策修正圧力は、幾分、和らいだように見えます。そうした中で、7月27日からの決定会合で植田日銀は、YCCの修正に踏み切るでしょうか。

アメリカのインフレが鎮静化し、利上げ局面が最終段階に入っていることは、非常に重要です。日銀が修正を目指すのであれば、残された時間はあまりありません。

アメリカがむしろ利下げに向くような状況で、逆に日本が「利上げ的な変更」を行えば、為替が円高に大きく振れるリスクがあるからです。今を逃すと、アメリカの利上げは次の景気回不服局面まで来ないかもしれません。

4月に就任した植田総裁は、当初の「緩和修正」に前向きな姿勢を見せたものの、その後はむしろ「現状維持」を前面に押し出しています。

植田日銀は、最終的に「金融正常化」という「出口」をめざしているのか、それとも「異次元緩和継続」に拘泥しているのか。7月会合の結果は、植田日銀のスタンスをはっきりと示すものになりそうです。

播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)