ゆっくり、じっくり、寄り添い続ける

 1週間後。げんきくんは再びお店の近くへ。赤松さんは、公園にいるげんきくんに話しかけます。

 (赤松さん)「げんちゃんこんにちは。覚えてる?おいで。よう来たなー」

 ゆっくり、ゆっくり、げんきくんはお店の入口へ近づいていきます。

 (赤松さん)「げんちゃんにとっては本当に一生懸命なことやから。僕らにとってはたったこれだけが彼にとってはすごい山を登っているから。それがちょっとずつやけど歩み寄っているじゃないですか。お母さんはそこだけを褒めてあげてほしい」
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  (赤松さん)「(店に)入ってみる?ここに大きな大きな壁があるねんな」
 (げんきくん)「(店に入らず離れてしまう)」
  (赤松さん)「きょうはここまででいいと思います。よくがんばったと思うし。…タッチ。ママにもタッチしておいで…入った」
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 日が暮れたあと、お店に入ることができました。赤松さんは、決して焦ることなく、げんきくんの気持ちに寄り添い続けます。

 (赤松隆滋さん)
 「お疲れさまでした。(Qどうでした?)いやーでもね、申し訳ない気持ちの方が強いんです、げんちゃんに対して。あの子はわがままとかでは一切なくて、怖いとか嫌がる理由がいっぱいあって、それは僕もすごく感じていたし。どんだけ寄り添えるかなって。きょうも寄り添えたとは思わないけどね。げんちゃんにとってかわいそうやったけど、でも(店に)入れたもんね。それでいい…いいんやろか…」

 「なぜ怖がっているのか、子どもの気持ちになって考える」。赤松さんはそれから半年、げんきくんの髪に、決してハサミを入れることはありませんでした。