ロシアによるウクライナ侵略の中、世界が注目する会合が日本であった。日本・アメリカ・オーストラリア・インド4か国による枠組み「クアッド」だ。自由で開かれたインド太平洋を旗頭に集まった4か国。問題は非同盟中立を貫くアジア最大の民主主義国家“インドの立場”だった。インドが少しでも“こちら側”に傾く姿勢を見せるのだろうか。

■「クアッドの生みの親は中国」


24日クアッド首脳会合を終え共同声明が出された。そこには「ウクライナの悲劇的な紛争が激しさを増す中・・・」や「進行中の人道危機・・・」という言葉を使い、平和と安定を目指す旨が参加4か国の共通の姿勢が強調された。だが声明の中でロシアの名があがることはなかった。
さらに岸田首相の会見も「インドも参加する形で、ウクライナでの悲惨な紛争について懸念を表明~力による現状変更をいかなる地域においても許してはならない・・・」としてロシアを名指しすることは避けている。
インドの軍事戦略を研究する長尾賢氏に聞いた。

米ハドソン研究所 長尾賢研究員
「岸田首相が良くまとめたという印象です。どうしてもほかの3か国とインドとの間には、ウクライナ情勢をめぐって意見の相違がある。(中略)いかなる地域といってどこの国とは言っていないが、ウクライナの名を出すことで、場所はここだよってロシアを示唆している。これは両取り。言いたいことはあるけれど意見の相違があるんで言えるのはこの辺ですっていう、巧くまとめたなという印象です」

もとよりクアッドは伝統的安全保障の枠組みではないので、ウクライナだけでなく、アジェンダとしてたてられたのは、インフラ、コロナと健康、気候、宇宙などなど多様な項目。
つまり軍事面で意見の相違があっても、この枠組み自体を継続することの方が大事だ・・・そう語るのは元防衛大臣の森本敏氏だ。

森本敏 元防衛大臣
「このクアッドにインドを入れるのに日本の役割が大きかった。首脳会談に格上げするまで苦労した。大事なのは、この枠組みをこれからずっと継続すること。軍事的にギラギラしてはいけない。(中略)できればここにインド太平洋の国、ASEANとか入れて、ヨーロッパにおけるEU、NATOみたいな、インド太平洋における非伝統的な安全保障の枠組みにしていきたい」

つまり何よりインドを仲間に入れ、“向こう側”に行かないようにすることが重要だというのだ。このインドを重要視した新しい枠組みに反発しているのは中国だ。中国側はクアッドを「小さな」サークルと揶揄交じりに非難した。
中国台湾の安全保障に詳しい松田康弘教授に聞いた。

東京大学東洋文化研究所 松田康弘教授
「中国はクアッドに対して大変な警戒心を持っています。というのはインドを持っていかれるんじゃないかっていう・・・。インドはもともとオーストラリアともアメリカとも仲良くなかった。それなのに、中国が国境紛争などでインドを追いやった。それにオーストラリア叩きをコロナ禍でずいぶんやった。これでインドとオーストラリアが接近しちゃった。今の中国外交は合理的ではない。クアッドの生みの親は中国だと言ってよいと思います」

中国にしてみれば、インドとアメリカは手を組まないものと思い込んでいたのに、急速に接近しクアッドが誕生してしまったと思っているのではというのだ。

東京大学東洋文化研究所 松田康弘教授
「中国側には裏切られたって気持ちがある。それならもっと大切にしていれば・・・。片方で貶めることをやっておきながら、一方でアメリカには行ってほしくない。最近の中国外交はこうした矛盾が良くあります」

クアッドでは日本、アメリカ、オーストラリアの“こちら側”として、一定の合意を見せたインド。しかし、ウクライナの悲劇を憂いながらもロシアへの制裁には加わらないというインドの現実もある。