橋岡は「助走が迷子になってしまっている」

大会3日目の男子走幅跳でも、日本選手権優勝5回、世界大会でも3大会続けて決勝に進んでいる橋岡優輝が敗れた。5回目に8m06(+1.1)を跳んでトップに立ったが、6回目に8m11(+2.1)を記録した城山正太郎(28、ゼンリン)に逆転され、2位に終わった。

「助走が迷子になってしまっているというか、従来の助走と、新しく走り方を変えての助走が、どっちつかずの状態で、地に足がついていない感じです」

以前は重心への乗り込みを比較的ゆっくり行う助走だった。それを昨シーズン後にサニブラウンも練習している米国チームに合流し、スプリント(純粋な短距離の速さ)に近い走り方の助走に変えてきた。それがまだ、跳躍に結びついていない。

「走り方を変えて、上手く行けば記録もついてくる感覚はすごくあったのですが、ちょっと脚を痛めたりということを繰り返して、つかみ切れていません」

しかし5回目にしっかりと8mジャンプをしたことが、今後に生きる。その跳躍がなければ4位だったが、日本選手権で3位以内に入ったことで、標準記録突破かRoad to Budapest 23で出場資格を得られれば、世界陸上代表入りが決まる。

ダイヤモンドリーグ・パリ大会で北口が65mの大アーチ

日本選手権が終わった後、日本の主力選手たちはヨーロッパの試合に多く出場しているが、現時点では明暗が分かれている。

北口は6月9日のダイヤモンドリーグ・パリ大会で優勝した。記録は65m09で、世界陸上のメダルを十二分に狙える記録である。2位のケルシー・リー・バーバー(31、豪州)に2m半の差をつけた。バーバーは19年ドーハ大会、昨年のオレゴン大会と世界陸上2連勝中の強豪選手である。

助走開始の際に、その場で小刻みにステップを踏む補助助走を付けた。日本選手権からわずか1週間で、課題をクリアする方法を見つけたようだ。

だがサニブラウンは、6月13日のパーヴォ・ヌルミゲームズ男子100mに出場したが、10秒29(+0.1)で8位。日本選手権決勝と同様に、スタートから精彩を欠いた走りだった。

サニブラウンは昨年のオレゴン大会に入賞しているので、10秒00の参加標準記録を突破したときと、Road to Budapest 23で、エントリー人数の48人以内に入れば世界陸上代表入りできる。

橋岡は日本選手権時に「条件が良い試合で、集中できる試合を見つけて、標準記録を切りに行くことを先決させる」と話した。まだ正式な出場選手は発表されていないが、6月30日のダイヤモンドリーグ・ローザンヌ大会に出場を予定している。

海外に舞台を移して奮闘する日本勢の動向に注目していきたい。


(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)