有力選手が相次いで敗れる波乱があった。陸上競技の第107回日本選手権が6月1〜4日、大阪市ヤンマースタジアム長居で行われた。昨年の世界陸上オレゴン女子やり投銅メダルの北口榛花(25、JAL)は2位。オレゴン男子100m7位のサニブラウン・アブデル・ハキーム(24、東レ)は8位。21年の東京五輪男子走幅跳6位の橋岡優輝(24、富士通)は2位と敗れた。

北口はオレゴンのメダル+今季の参加標準記録突破ですでに、8月の世界陸上ブダペスト代表に内定済み。サニブラウンと橋岡は今後、7月30日までに標準記録を突破するか、Road to Budapest 23(標準記録突破者と世界ランキング上位者を1国3人でカウントした世界陸連作成のリスト)で100mは48人、走幅跳は36人のエントリー人数枠に入れば代表に選考される。

北口は「投げたい気持ちが前のめりに」

大会2日目の女子やり投に優勝したのは斉藤真理菜(27、スズキ)で、5投目の61m14で北口を逆転した。北口は1投目の59m92でリードしたが、3投目以降はすべてファウル。60mを超えなかったのは、22年は2試合だけである。日本選手間の敗北も20年10月以来だった。

「日本人には負けたくないというか、負けてはいけない気持ちはずっとありました。結果はすごく残念ですし、1本も自分の思い描いた投てきに近い投てきすらできなかった」

競技後の取材に答える北口は、涙をこらえることができなかった。

今季は織田記念(4月29日)、木南記念(5月6日)と2試合連続64m台で、過去最高のシーズンインを見せた。だが3戦目のゴールデングランプリ(GGP)は61m34で外国勢に敗れて4位。

「GGPでちょっとタイミングがずれたのですが、コーチ(チェコ人のデービット・セケラック氏)は見た目が良くなっていると言ってくれるんですけど。でも私は距離に結びついてないのが気に食わなくて」

練習ではやりたい動きに近づいた。だが練習では、選手のタイプにもよるが試合ほど距離が出ない。北口は「53mくらい」しか投げられないため、本当にその動きで良いのか自信を持つには至らない。

自信の有無がどのくらい影響したのかはわからないが、日本選手権では1投目が59m92。「悪くはないのかな」と思った。だが2投目から「崩れてしまった」という。

「投げたい気持ちが、すごく前のめりの形になって動きに現れてしまいました。結局、投げるのは自分なので、改善点を自分が見出せるようにしないといけないんです。考えてはいたつもりですが、もう少し冷静に判断できないといけなかった」

やり投という種目の繊細な部分を、日本選手権の北口の敗北で目の当たりにした。