「病気のおかげでいまの幸せがある」

式に駆けつけた同級生と思い出話を語る石山さん(写真左)

たった一人の卒業式には、当時の同級生も駆けつけた。

「顔見ただけじゃ分からないな」
「なみちゃんだよ、なみちゃん」
「ああ、なみちゃん、きょうはありがとね」

<石山さんの同級生>
「元気になってよかった」
「長い間大変だったなって」
「おめでとう」

<石山春平さん>
「一般の人から見ると大変な思いをして大変だったろうねって思うけれど、私は病気になったおかげでいまの幸せを掴んだとそう思っています」

しかし、国の政策で隔離され、人間の尊厳を踏みにじられてきた元患者たちの歴史が終わったわけではない。

亡くなって後も付きまとう偏見、差別

駿河療養所内にある納骨堂 321人の遺骨が納められている=静岡県御殿場市

いまも、全国には14の元ハンセン病患者が生活する施設が残り、812人が入所している(2023年5月1日時点)。治療が終わった現在も、家族と離れた生活を送らざるを得ない人たちがいるという現実がある。

静岡県内に2つある療養施設のひとつ、国立駿河療養所(御殿場市)は1945年、人里離れた山の中に作られた。最も多い時には470人が暮らし、78年経ったいまも38人が留まっている。

駿河療養所の自治会長を務める小鹿美佐雄さん(81)。小学4年生の時にハンセン病を患い、治療後もここで生活を送っているという。

<小鹿美佐雄さん(81)>
「自分に自信が持てなくなってしまうこともあるんじゃないかなと思うんですよね。いろんなことをやっても、あいつはハンセン病だからっていう形でそういうのが大きな障害になってる」

駿河療養所には、ここで生涯を閉じた人たちが眠る納骨堂がある。納められている遺骨の数は全部で321。実家の墓に入ることすら許されなかったという。

亡くなった後も付きまとう偏見や差別。令和の世で、今度は新型コロナで顕在化した。