FRB内部で隔たり、対立回避が狙い?

実際、「あと2回利上げ」というのは、参加者それぞれの予測の中央値に過ぎず、「据え置き」や「あと1回」を予測した参加者は計6人と3分の1もいました。

一方、「あと3回」「あと4回」と予測した人も計3人いて、FRB内部がタカ派とハト派で、相当隔たりがあることを示しています。

ちなみに今回の据え置きの政策決定は「全員一致」でした。対立回避のためにパウエル議長らが奔走し、「今回は据え置き」「年内あと2回」でなんとかまとめたのではないか、という見方も出ています。

銀行破綻の影響を注視

パウエル議長は、あと2回の利上げを見込みながらも、今回は利上げしなかった理由を問われ、「銀行破綻の影響などもまだ完全に把握できていない」と、正直に胸の内を明かしています。

また、1年程度で5%もの急速な利上げをした効果が、どの程度の時間差をもって出てくるのかも見極めたいところでしょう。

一方の金融市場は、銀行破綻を目の前にして、金融機関が融資態度を一斉に慎重化させたことを重く見ています。

市場関係者は、利上げ数回分に相当するという環境変化は、間違いなく景気を冷やし、必ず労働需給の緩みやインフレ鎮静化につながると見ているようです。

利上げ「終着点」後のシナリオは?

しかし、そこから先のシナリオについては、楽観的な市場関係者でも描き切れていません。景気後退に陥り、一気に利下げ局面に移行するのだとしたら、株価が上がって行くのは不自然です。

一方で、景気が腰折れせずに、そこそこ良い状態が維持されるのであれば、高い金利水準が続くことになりますが、「金利高」と「株高」が長期間両立するというのも無理なシナリオです。

まだまだ量的に「カネ余り」状態が続いている市場の側が、結局、「いいとこどり」の解釈をしていると言われる所以です。

利上げの終着点へのガイダンスを示すものとして注目された、今回のFRBの決定は、結局のところ、逆に「解釈次第」という結果になってしまったようです。それは、「まだ利上げがある」と見るか、「ほとんど終わりに近い」と見るか、という見方の違いでもあります。

これだけインフレの先行きを見誤ってきたパウエル議長に、どちらなんだと詰めたところで答えようがないというところでしょうか。

播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)