是枝監督が子役に“伝えたこと”とは

山本キャスター:
映画「怪物」の主な主人公を簡単にご説明させていただきます。安藤サクラさん演じる“息子を愛するシングルマザー”そして永山瑛太さんが演じる“生徒思いの小学校の教師”そして2人の子どもたちということで、三つの視点から物語は描かれていきます。撮影現場では、是枝監督から子どもたちに演技指導をする場面がありました。

映画撮影中の是枝監督
「言葉のキャッチボールが上手くいっていない気がしました。それぞれがそれぞれの台詞を言ってるように聞こえた。投げかけて、受け止めて、動いてください」
小川キャスター:
子どもたちへのこうした演技指導があったわけですか。
是枝監督:
そうですね。この子たちは本当に上手だったので…こんなことしたかな。でも“キャッチボール”というのは大事なので、相手のセリフを聞くということだけは注意してました。
小川キャスター:
キャストの皆さんの演技も素晴らしかったです。監督はどんなことを一番意識したり大事にされてましたか?

是枝監督:
今回は坂元裕二さんの脚本ということで、それをどう受け止めて、見えない“怪物”というものを見た人たちが最終的にどこに見つけていくのか、そこをちゃんとやりたいと。そしてそれが、映画から、はみ出さないといけない。映画の中で“怪物”探しをしているだけではいけない。それが作り手である僕にも観客にも跳ね返ってくるような、そういう映画にしたいなということを意識してました。
小川キャスター:
そうですね、自分自身がこう問いかけられているような気持ちになるといいますか。一寸先の想像が覆され続けていくので、どんどん自分の中の化けの皮が剥がされていく感覚のようなものもありました。あまり踏み込みすぎるとネタバレになってしまうんですが、直接的な説明口調のセリフというのが非常に少ない中で、かなり具体的な言葉というのが、印象的だった音楽のあるシーンがあって…。それはどういった思いから?

是枝監督:
田中裕子さんの台詞ですよね。本当に言いたいことは、言葉にしない、別の形で表現される映画だというのがあったので、あの一言がどういうふうに響くのか、あれを聞いた上で、その音の響きを聞くという流れが、やはり脚本の一番の中心にあったものですから、そこだけは最終的には残しました。悩んだんですけど。