三浦龍司(21、順大4年)が世界へのプロセスを確認する。陸上競技の第107回日本選手権が6月1~4日、大阪市ヤンマースタジアム長居で行われる。三浦はすでに世界陸上参加標準記録を突破しているため、大会2日目(6月2日)の3000m障害で3位以内に入れば代表に内定する。

三浦にとって3000m障害はゴールデングランプリ(以下GGP)に続いて今季2レース目。21年の東京五輪7位入賞、昨年のダイヤモンドリーグ最終戦4位と、すでに世界大会での実績も十二分に残している。世界で戦うためのプロセスを踏む三浦が、日本選手権でどんな走りを見せるのか。

ゴールデングランプリの収穫と課題

昨年に続いてGGP(5月21日)が三浦の3000m障害シーズン初戦だった。昨年は8分22秒25だったのに対し今年は8分19秒07。これは昨年の2000m通過が5分40秒とスローな展開だったのに対し、今年は5分38秒と少し速かったことも影響していた。

三浦龍司の1000m毎の通過タイムとスプリット・タイム

 
三浦はGGPのタイムの感想とレース内容を、次のように話していた。

「8分20秒切りを目標にしていましたが、手応え以上のタイムを出せたので、体の反応、走り自体は良いと感じました。障害へは少し足が合わなかった(踏み切り位置などが良くなかった)のですが、周りの選手の動きを見ながら集団の中でロスなく走ることや、水濠で推進力が出過ぎないようにすることは、昨年の世界陸上やダイヤモンドリーグの経験が生きています。しかしラスト1000mでの切り換えができませんでした。ラスト150mから勝ちきることはできましたが、一歩一歩の推進力みたいなところはまだまだだったので、改善の余地があります」

三浦自身は反省点に挙げたが、ラスト1000mは昨年のGGPより1秒速くなっている。昨年より2000m通過が速かったにもかかわらず、である。

今季の三浦は昨年よりスロースタートだった。3週間の教育実習による練習の遅れが生じ、強化期間を4月中旬までとった。試合モードの体にしなかったため、GGPまでのレースは昨年より結果が悪かった。

気象条件などが違うので安易な比較はできないが、昨年よりタイムが良かったGGPで、世界陸上に向かう三浦に明るい兆しが現れ始めた。

想定されるペースと三浦のスパート力

日本選手権で三浦はどんな走りをするのだろうか。

「GGPはシーズン1本目で、スタートラインに立ったばかりです。障害の跳び方が山なりでロスがありました。最後の水濠でバランスを崩したのは、足(脚力)が残っていなかったから。地面の反発を受けたり、負荷のかかったりするときに耐えられる脚作りなど、3000m障害用の練習をしていく必要があると感じました。2本目の日本選手権から、世界に向けてどんな位置にいるのを感じられると思います」

三浦は3000m障害を“総合力の種目”と、何度も話している。スピード、スタミナの両面はもちろんのこと、上のコメントにある脚力、踏み切り位置をコントロールする力、着地後にバランスを維持する力など、さまざまな能力が必要とされる。

GGPでは課題も多く残ったが、今年に入って3000m障害の練習はGGP直前から始めたばかり。「(日本選手権に向けては)GGPで出た課題だったり、体やラストもキレだったりは重点的に伸ばしていきたいです」

そうした練習をしても、「GGPと同じレース前の感覚しか作れなかったら、勝ちに行く走りになる」という。その走りでもGGPよりは状態が上がっているはずなので、2000m通過が5分40秒前後と遅めになった場合でも、ラスト1000mは2分40秒切りを目指すはずだ。

「レース前の感覚が良くなってくるのであれば、何かしら、ちょっと挑戦した走り方をするかもしれないです」

挑戦することで結果的に、前半のスピードが速くなる。2000mを5分30~35秒と速めのペースで通過して、ラスト1000mも2分40秒切りを目指す。8分15秒を切るタイムで3連勝できれば、昨年以上の上昇曲線に乗る。ブダペストの入賞が見えてくるだろう。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)