「三国決戦のホームゲームでスタジアムを満員に」

「今季2度目のナイターです。大勢のお客様がいらっしゃることが予想されます」。
試合当日の午後1時、メインスタンド下にある一室で始まったミーティング。藤枝MYFCの牧田善明取締役のひと言で、集まったスタッフは表情は一気に引き締まった。無理もない。Jリーグに参入して10年目を迎える藤枝にとって、ホームスタジアムを満員にしたことはこれまで1度もないからだ。
過去最多観客数は今年記録した4,363人(5月3日、対大分)。現在、バックスタンドが改修工事中のため、満員となっても5,937人。それでも、クラブとしては今年ひとつの目標を掲げた。静岡県勢3クラブがしのぎを削る「静岡三国決戦」のホームゲームでスタジアムを満員にする、というのだ。
「観客が10倍に…大きく変わった」

「激アツな1週間になる」。
広報担当の伊藤早紀さんは、5月13日のアウェー清水戦、そして、17日のホーム磐田戦と続く1週間に狙いを定め、SNSなどをフル活用してPRに力を入れてきた。これが功を奏す。J2初年度ながら奮闘を見せるチームの勢いもあり、チケットは順調に売れ、当日朝10時段階で残り枚数は100枚を切った状態に。ここで、伊藤さん、さらに煽る。
「クラブ史上初!満員のスタジアムまであと92席」。
これに選手たちも応える。
「100席きりました。後少しです!」(FW渡邉りょう選手)。
「満員にしましょう。是非お友達も誘って応援に来てください」(MF水野泰輔選手)と自身のSNSで後押し。
午後1時33分、「チケット、全て売れました」。スタッフの弾む声に伊藤さんは思わず「ウルウルしちゃう…」。正面玄関に設けられたチケット売り場には「完売」と書かれた貼り紙が掲げられた。知らせを聞いた徳田航介社長(38)も「僕が関わり始めたころは(観客が)500人とか700人。それが10倍になった。大きく変わったなと」。