環境省の調査によりますと、1年間に購入する衣服は1人あたり平均18枚、一方、手放す服は12枚です。国内全体でみると、供給された衣服は一年間で81.9万トン、手放されたのは78.7万トンで、そのうち3分の2は廃棄処分されています。

まさに“大量生産・大量廃棄”という形ですが、捨てられる1着にもボタンのプラスチックや金具、生地を織る綿花などたくさんの資源が使われています。

アパレル産業の環境への負荷が問題視される中、2022年、国内有数のニットの産地・五泉市である製品が生まれましたた。コンセプトは「10年着られるニット」です。

五泉市で60年続くニットメーカー「ウメダニット」は2022年、自社の名前を冠したブランド「UMEDA」を立ち上げました。

【ウメダニット 梅田大樹社長】
「10年着られるように、そもそも丁寧に作っているが、それを声高に、しっかりコンセプトにした」

「10年着られるニット」は編み目の大きさが3種類。ウメダニットが得意とする凹凸のない美しい編み目が特徴です。形は丸首のプルオーバーとカーディガンの2種類で男女兼用のサイズ展開。色は黒とグレーのみですが、ここにもこだわりがあります。

ウメダニット 梅田大樹社長

【ウメダニット 梅田大樹社長】
「青みのグレーから赤みのグレーまでいろいろあるが、10年使うということで、デニムだったり、チノパンだったり、昔からあるファブリックと合わせたときに一番着られる色というので、少し黄みのあるグレーをチョイスしました」

シルエットもトレンドに左右されない形を追求。年代や性別を問わず着る人に長く寄り添ってくれる1着を目指したといいます。企画した背景には会社の歴史と未来への思いがありました。

【ウメダニット 梅田大樹社長】
「ファッションはトレンドがあり、いろいろな新しい開発の楽しみがあると同時に、70、80、100周年を目指していこうと社員に声掛けした時に、もう一つ違う軸で培ってきたものにフォーカスして一つのものを突き詰めていくというのもあってもいいんじゃないかと」

ただ、10年着るためには適切な手入れが必要です。
ニットで心配なのは毛玉や穴あきですが、「UMEDA」のニットはリペアの持ち込みが可能。さらに、本社併設の直営店では洗濯用洗剤を一緒に提案するなど、日頃のケアについてもスタッフがアドバイスしてくれます。

【ウメダニット 梅田大樹社長】
「『全く毛羽立ちません』とか『何も変わりません』ということではなくて、それがしにくいようには作っているんですけど一緒になって大事にしていただきたい」

老舗の技術力と丁寧なものづくりが生んだ1着は、着る側の私たちにも服との向き合い方を問いかけています。

【ウメダニット 梅田大樹社長】
「1枚1枚が“子ども”と言ったら大げさかもしれないけど、自分たちで生み出したものなので、少しでも長く上手に着こなしを変えて使っていただくのが一番うれしいことなのかな」

私たちが今、持っている服を長く着るだけでも環境の負荷を減らすことができます。環境省は今よりも1年長く着ることで「日本全体として4万トン以上の廃棄量の削減に繋がる」としています。1着と長く付き合うという楽しさと大切さも改めて考えたいですね。