■名物女将とさば味噌の「カミ・シモ」

渋谷駅から徒歩10分、表通りから外れた通称「奥渋」といわれるエリア。そこに現れたのはレトロな店構えの魚屋さんです。元気な声で迎えてくれたのはこの店の名物女将・鈴木佳子さん。創業117年の老舗「奥渋魚力」は鮮魚店の傍ら、定食屋としても営業しているんです。プリプリの刺身に今が旬、あじのなめろうなど毎朝豊洲から直送される新鮮な魚が食べられるんです。
そんなお店の看板メニューは「さばみそ煮定食」。12時間煮込み、臭みもきっちり取られたさばの味噌煮には、老若男女全員がはまってしまうほど。
奥渋魚力4代目 鈴木安久さん
「うちの看板メニューはさば味噌、カミとシモ」

なじみのない言葉ですが、さばの頭側の半身をカミ、尻尾側の半身をシモと呼び、好きな方を選べる鮮魚店ならではのメニューです。ご飯とお味噌汁はおかわり自由で、お客さんもお箸が止まりません。
奥渋魚力女将 鈴木佳子さん
「札の裏を見てください。あら、両方当たりました」
実はこれ、当たりくじ付きの食券の札なんです。このお店、食券代わりに札を取って席に着くシステムなんですがそのメニューの札の裏には番号が。数字が当たりなら、9種類の小鉢の中から好きなものをひと品サービスします。
常にお客さんを楽しませているパワフル女将はなんと御年78歳。鮮魚店で定食が食べられる今のスタイルは、約40年前、女将が店頭に並ぶ魚を見ていった言葉から始まりました。
奥渋魚力女将 鈴木佳子さん
「これだけおかずがあるんだから、ご飯と味噌汁があれば100%大丈夫って。いきなりやったの。やりますよ、じゃなくて」
昔から変わらない小さな看板の前には、今では多くの人が列を作っています。来るお客さんみんなから愛される女将。
奥渋魚力女将 鈴木佳子さん
「子どもがお腹を空かせてくるものだから来たら早く食べさせてあげたい。親から子どもへの愛情です」
路地裏で見つけた老舗の味は今日もみんなを笑顔にしていました。