何のために絵を入れたのか?
では、なぜ一般的な点字ブロックではなく「絵のついた」点字ブロックを製作したのでしょうか。それは、目が見える人に向けて、点字ブロックの存在をアピールするためだといいます。
「STREET ARTLINE PROJECT」実行委員会代表 阿部佑紀さん
「晴眼者(目が見える人)側が、点字ブロックの存在意義を普段から意識できていないことが問題としてある。だから点字ブロックを塞いでしまったり邪魔してしまう。選挙活動を点字ブロックの上でやる人もいるぐらいですから。点字ブロックが途切れていたり、ちょっと剥がれてても気にしたことがないですよね。そんな現状に気づいていないんです。でも、その点字ブロックがアートになることで『なんで点字ブロックにアートが載ってるんだろう』と、一時的には目が行きやすくなるじゃないですか」
また、バイオリニストとして活躍しながら、STREET ART LINE PROJECTに障害者側の立場でメンバーとなっている、全盲の白井崇陽さんもこのプロジェクトの意義をこう話しています。

「STREET ART LINE PROJECT」メンバー 白井崇陽さん
「このプロジェクトに僕が面白いなと思った理由が、視覚障がい者が使いやすい点字ブロックを作るという内容ではなくて、逆に点字ブロックがつながっていなかったり、壊れていたり、人が立っていたり、自転車が置かれていたりとか、そういう状況に対して、このままではダメなんじゃないかということで出来たプロジェクトだったので、むしろ視覚障がい者が使いやすいというよりも、見える人たちに改めて点字ブロックの認識をしてもらったりとか、点字ブロックの存在価値を作り直すという、そういう観点が面白いなと思ったんですよね」
点字ブロックの存在をアピールするためのアート点字ブロック。
一方で、視覚障がい者にとっては不便だったり、機能性に不安があったりしないのでしょうか。白井さんの話です。
「STREET ART LINE PROJECT」メンバー 白井崇陽さん
「僕自身もそうですけれども、全盲と言われる見えない人たちにとっては点字のボコボコした感覚が大事であって、絵が描いてあろうとなかろうと大した問題じゃないんです。ただ、弱視(ロービジョン)と言われる少し目が見える人たちにとっては、あの黄色い線を目で頼りにしながら探したり歩いてる人もいるので、そういう人たちにとっては結構重要な問題だなというのがあって、実際に弱視の人にそのアート点字ブロックを見てもらって歩いてもらって、気づいたことなど意見を伺いました」