「アート」の意味
今回、期間限定で設置しているアート点字ブロックは「STREET ART LINE PROJECT」と、アーティストとビジネスをつなぐアートエージェンシー「TokyoDex」、渋谷駅前での持続可能なまちづくりを推進する「一般社団法人 渋谷駅前エリアマネジメント」の3団体が共催する「PLACEMAKING ART in SHIBUYA」というプロジェクトの1つとして展開しているものです。公共空間を多様な人たちの ”新たな居場所” として活用しようというこのプロジェクトですが、点字ブロックに描かれている絵はどのように生まれたのでしょうか。阿部さんのお話です。
「STREET ARTLINE PROJECT」実行委員会代表 阿部佑紀さん
「そもそもは、渋谷のダイバーシティ&インクルージョンを推進させるためのコンペがあって、それに応募するアイデアの一つとしてアート点字ブロックの企画を考えていました。特に渋谷とかそういう場所から発展していったストリートアートというカルチャーと、街とアートが共存して進化している文化。その2つの軸で、点字ブロックが抱える晴眼者がなかなか意識しづらい課題に注目を向けさせるための一つの要素として、このストリートアートっていうのを使えないか、という発想から、点字ブロックとアートを掛け合わせようという発想に至りました」
プロジェクトのスタートとして、2022年に「ダイバーシティ&インクルージョン」をテーマにしたワークショップが開催され、渋谷の街づくり関係者や、視覚障がい者、アーティストらが参加。粘土などの素材を使って様々な作品が完成しました。そして今年、その作品を元にした壁画アートを渋谷駅西口の工事現場の仮囲いを使ってライブペイントで実施。そしてその絵が点字ブロックに描かれました。これらのワークショップなどアートの部分を携わった「TokyoDex」のクリエイティブディレクター兼代表、ダニエル・ハリス・ローゼンさんのお話です。

「TokyoDex」代表 ダニエル・ハリス・ローゼンさん
「アートと社会の関係性に対する注目はすごい上がっている。意外なイメージかもしれないけれども、社会を引っ張るとか、現場の仕事のシンボルとして使われているので、ものすごいインパクトを与えますよね。こういうワークショップはすごく大事なツールだと思っていて、組織であれば、例えば自分たちのミッションは何なのかとか、今後はどういう方向性に進めたいのかとか、メンバーの意見を聞いてレポートにする。今回のプロジェクトは「ダイバーシティ&インクルージョン」をみんな話し合って、様々な色で動物や植物、建物などその街の多様性を表すモニュメントとして残す。そうすると参加者がそれを見て、自分がワークショップに参加したからこういう作品になったと、ある意味「自分も作った」という気になるわけです。一緒にアートを作るというプロセスはすごく大事になっていくんじゃないかなと思っています」
また、STREET ART LINE PROJECTのメンバーである道堂本丸さんもこう話します。
「STREET ART LINE PROJECT」メンバー 道堂本丸さん
「ストリートアートは壁の落書きというような見え方になっている。渋谷でもたくさん撤去されているので、自由に作品を作れる場所が日本全体ではすごく少ない。そういう意味でいうと、点字ブロックにアートを入れるという新しい手法というか、キャンバスみたいなところができるとアーティスト自身もすごく嬉しい。公共的にちゃんとそういう文化を育てていくというところにも、実は役に立っているのです」
