育成制度に応募した訓練生『サーカスの道を捨てたくない気持ちが強くて』
そんな厳しい状況の中、サーカスは新たな取り組みを始めます。それは「サーカス・アーティスト育成制度」です。サーカスの舞台に立つことを目指す若者にプロの講師から指導を受ける機会を与えるというものです。
(ポップサーカス 澁谷明浩さん)
「現実的なことを言えば、いろいろ収入が全く無いわけですから、そういう中で始めるというのは大変だったんですけれども、希望とか夢とかを途切れさせないということをやらないと、そのままズルズルと諦めモードになるのはやっぱりよくないので」
1年半前にオーディションを開始し、いまサーカスには5人の訓練生がいます。そのうちの1人が、兵庫県出身の藤田真子さん(21)です。
(訓練生 藤田真子さん)
「中学生のときに家族旅行でリゾート施設に行ったんですけれども、そのリゾート施設のアクティビティに空中ブランコがあって、空中ブランコをやったときに『これやりたい!』みたいな感じで。いったん普通の高校に進学していたんですけど、いろいろ進路とかを考えるにあたって、やっぱりそういう道を捨てたくないなという気持ちが強くて」
目指すなら早いほうがいいと、高校3年のときにアクロバットを学ぶことができる高校に転校。本格的に技を学びサーカス団への就職を目指しますが、コロナの影響でサーカスの求人は全くありませんでした。
(訓練生 藤田真子さん)
「練習は続けているけどどうしようかなと思う瞬間はいっぱいあったんですけど、そんな中でポップサーカスを見つけた」
諦めかけていた夢がこの育成制度でつながりました。しかし入団当初、サーカスは公演休止。練習に使う設備はなく、もっぱら体育館や野外で筋トレやマット運動といった基礎訓練の毎日。繰り返し行うことで、できなかった技もこなせるようになりました。
そして今年2月、3年ぶりにサーカスの公演が再開され、訓練生もサーカスの設備を使ったパフォーマンスの練習ができるようになりました。
(訓練生 増野さんごさん・19)
「最初の合宿は回数がエグくて。昼間にやったのに夜また同じのを繰り返すって言われて、キツって思って」
訓練生を指導する中国の「大連雑技団」出身の張永強先生。妥協を許さない先生も訓練生のがんばりには太鼓判を押します。
(張永強先生)
「彼らはみんな一生懸命やっています。とてもいい。私はとても満足しています」