難民申請認められず“仮放免”に…「強制送還になったら逮捕される」

逃れた国の違いで、運命が分かれた兄弟がいる。埼玉県・川口市で暮らすクルド人のアリさんは17年前、トルコから来日した。入管の施設に収容された時期もあったが、今は「仮放免」の状態だ。

これまでに3回難民申請をしたが認められず、入管法が改正されれば強制送還になりうる。

一方、3つ年上の兄は1998年にトルコからドイツに逃れた。そして、5年後に難民認定を受けたという。

トルコ出身クルド人・アリさん(43・仮名)
「ドイツで撮ったパーティーだと思う。仕事もしています。自由というか…」

膳場貴子キャスター
「境遇としては同じなのに、ドイツでは難民と認められて日本ではあなたは難民と認められないと?」

「(日本で)難民申請をしてそのあとドイツに行く手続きもした。それもだめだった」

ーーどういう理由でだめなのでしょうか?

「オーバーステイと言われた。あと、1か月いくら使えるとか計算して、このお金が口座にないとビザがおりないと言われた」

日本での不法滞在と資金不足を理由にドイツへのビザは発給されなかったという。

ーートルコに送還されたらどういう危険が?

「逮捕になると思う」

ーー何で逮捕されるのですか?

「クルド人、クルド民族だと迫害される。トルコから見ると(クルド人は)テロリストと思われている」

1980年代、トルコでは、クルド人国家の樹立を掲げた「クルド労働者党」がトルコ政府と武装闘争を開始。クルド人は「国家を持たない世界最大の民族」と言われ、虐げられてきた。

埼玉県・川口市周辺には、1990年代頃から故郷を追われたクルド人たちが住み始め、今は約2000人が暮らしているという。

「仮放免」のアリさんは、事前に入管の許可を得ない限り住んでいる都道府県を出ることはできない。

トルコ出身クルド人・アリさん(43・仮名)
「日本に17年間滞在して、川を渡っちゃ行けないというのは寂しい。県外に出ちゃいけないのは、結局収容されているのと一緒です。日本には自由があるが私たちにはない。でも日本は安全だし安心」

アリさんは日本で働いて、家を買い、自由に暮らしたいと望んでいる。

「改正案通ったら(在日クルド人は)みんな大変だと思う。次々強制送還になったらどうなるか分からない正直。そこまで考えたくない」