一方、親ロシア派に拘束された3兄妹の父・イェフフェンさん。
ウクライナ軍との関係について繰り返し尋問を受け、ときには拷問を受けた。50日後に突然釈放され、その日の朝に3兄妹がロシアに連れて行かれたことを聞かされたという。
父親・イェフフェンさん
「私はヒステリックになり、大声を上げました。私はどうやったら子どもたちに会えるのかを考え、いろんな人に子どもたちの情報はないかと尋ねました。子どもたちは私が生きていることを知れば、最後の最後まで私を待っていることを知っていましたから」
すると、奇跡的ともいえる事実を知る。マトベイ君が偶然にもイェフフェンさんの携帯電話を持っていて、知人と連絡を取っていたのだ。

再びつながった親子。
マトベイ君はロシアの職員から養子を勧められた際も父親に連絡することを職員に告げた。
マトベイ君
「お父さんのアドバイスなしでは決められない、と職員に話しました。職員は僕に養子になることを求めましたが、自分の意志を強く持ち続けました。職員らは、お父さんと電話をすることを許してくれたけど、『どれくらいかかるの?』、『早く電話を切るように』と言ってきました」
電話を受けた父親のイェフヘンさんは、「すぐに迎えにいく」と伝え、養子を断るよう言い聞かせた。そして3日後、NGOの協力を得て施設にたどり着いた。
親子は実に74日ぶりに再会した。
イェフヘンさん
「(施設には)一緒に来ていたボランティアも入ることは許されませんでした。敷地内のそこかしこに監視カメラがあり、まるで“子どもの刑務所”でした」「子どもに会えたときは、笑いながら泣きました」

マトベイ君
「階段でお父さんの声を聞いて走っていったんだ。幸せで涙が出ました」
ウクライナ政府によると、侵攻後ロシアに移された子どもは2万人近く(4月6日時点)にのぼり、3兄妹のように親元に戻れたのは300人あまりに留まっている。マトベイ君は、一緒にいたほとんどの子どもたちが「ロシアで養子になった」と話す。
“保護”を理由に子どもをロシアに連れて行く行為は、子どもたちから祖国や家族、アイデンティティーを奪うものだと国際社会から非難の声が高まっている。
ICC=国際刑事裁判所は3月、プーチン大統領とリボワベロワ氏の逮捕状を発行した。占領したウクライナの地域から子どもをロシアに不法に移送した戦争犯罪の疑いだ。
一方のロシア側は逮捕状の発行に強く反発し、リボワベロワ氏は容疑を否定。「子どもの最大の利益のために、家族の同意を得て行動してきた。要請があれば引き渡す用意がある」と強調し、活動継続の意思を明らかにしている。