「ロシアによって武器や弾薬が密輸され、他の紛争地域や世界の様々な場所で使用されている」

ロシア系住民が3割~4割を占める沿ドニエストル共和国(トランスニストリア地域)北部の町コバスナ。ここをめぐって今、ロシアが情報戦を仕掛けているようだ。

ロシア国防省は「ウクライナが沿ドニエストル共和国に侵攻する計画がある」と発表した。実はコバスナには、旧ソ連が設けた東欧最大級の武器弾薬庫がある。これを狙ってウクライナが侵攻してくるとロシアは主張している。

だが、この弾薬庫について番組では興味深い証言を得た。

モルドバ元外務次官 イウリアン・グロザ氏
「(コバスナの弾薬庫に)現段階で何が残っているのか正確にはわかっていません。というのも、何年も前からロシアによって武器や弾薬がこの地域から密輸され他の紛争地域や世界の様々な場所で使用されているのを見聞きしてきたからです」

証言が正しければ、ロシアはコバスナの弾薬庫にもう大したものは残っていないことを知りながら、ウクライナがそれを狙って攻めてくると情報を流している。そして、『沿ドニエストルを守る』という名目で、モルドバに侵攻するかもしれない。
これはウクライナ侵攻と全く同じ手口だ。

元陸上自衛隊の渡部氏は、そもそも弾薬庫は中身の有無ではなく、ロシアが軍を駐留させるための口実に過ぎないという。

元陸上自衛隊東部方面総監 渡部悦和氏
「この弾薬庫をウクライナが狙っているというのは、明らかにロシア一流の偽旗作戦だと私は思っています。これまでの情報から見ると、ロシアはモルドバに対しハイブリット戦を仕掛けている最中。非軍事的手段でもってモルドバ全体を占領できるのであれば、どこに効果があるのかと言えば、実はウクライナに対して西側から脅威を与えることができる。(中略)ウクライナに対して360度から脅威を与えられるという価値がある

偽旗作戦という見方は東野教授も同様だ。

筑波大学 東野篤子 教授
(ロシアが)“ウクライナが狙っている”と言った地域は、ロシアが狙っている地域だと思います。(中略)ただ、ロシアがウクライナから守ると言って沿ドニエストルに飛んで来て攻撃をするということ自体は実現の可能性があるのかどうか…。ヨーロッパでも議論の2分するところです。でも、ここまで度々言及されるということ自体、警戒しておくべきだと…」

どうやら実際に攻める攻めないは別として、“ロシア離れを進める国は、とりあえず掻き回しておこう”というのが“プーチン式”のようだ。

(BS-TBS 『報道1930』3月7日放送より)