「モルドバがプーチン大統領の想定以上にロシア離れを…」
モルドバのデモは本当にロシアが画策したものなのだろうか。“政権転覆計画”は事実なのだろうか。もしも事実なら、ロシアは何を目指しているのだろうか?
筑波大学 東野篤子 教授
「2022年の12月には、モルドバの情報局のトップが『ロシアはモルドバに対する侵略の可能性を捨てていないだろうし、その場合にはロシアの支配地域であるトランスニストリアをクリミアまでの回廊にする恐れがある』と言った。これはドキリとする発言だったんですけれど、首相府も認めているので、急に出てきた話ではない」
「ロシアのショイグ国防相も『トランスニストリアを取ればロシアにとってボーナスになる』とプーチン大統領に持ち掛けたという話もあるので、トランスニストリアを含めたモルドバという地域が常に攪乱の対象であることは間違いない」

東野教授が言うトランスニストリアとは、モルドバの東部、ウクライナとの国境に隣接する地域で、親ロシア派の住民が多い。未承認ではあるが事実上の独立国家として『沿ドニエストル共和国』とも呼ばれる。
実はプーチン大統領は沿ドニエストルの一部主権をモルドバに認める大統領令に署名していたが、2月21日これを破棄している。ロシアとモルドバを語る時、この沿ドニエストル(トランスニストリア)抜きには語れない。
朝日新聞 駒木明義 論説委員
「モルドバにはドドンという、とても親ロ派の大統領がいた。ところが2020年、彼が負けてサンドゥという非常にEU志向の強い大統領が誕生した。これがまずプーチン大統領は気に入らない。それから沿ドニエストル。ここにロシア軍が駐留しているんですが、空港が機能していないのでモルドバ政府の承認がないと移動できない。この状況を何とかしたい。さらに去年EU加盟を表明して加盟候補国になった。これもプーチン大統領は…」

つまり、現在のモルドバはプーチン氏の気に入らないことだらけなのだ。因みに失脚した親ロシア派のドドン前大統領は2022年5月に国家反逆や汚職の罪で逮捕されている。それにしてもなぜ今、モルドバなのか?
朝日新聞 駒木明義 論説委員
「ウクライナ侵攻を機にモルドバがプーチン大統領の想定以上にロシア離れを進めてしまった。例えば国連のロシア非難決議、これにモルドバは賛成している。旧ソ連圏の中ではバルト3国以外では珍しい。それからNATO加盟国ではないので手を出しやすい。そして、やはりトランスニストリア地域を押さえるためには、いま手を付けないと間に合わない。サンドゥ大統領の下、どんどんEU寄りになってしまうという焦りがあるのではないか」