徹底的なデータ収集で読者のニーズをがっちりつかむ

 (林)「1号あたりの制作期間はどのくらいですか?」
(山岡)「一般的な世の中の雑誌はだいたい発売から3か月前くらいに企画を考えて作るんですね。それに対して『ハルメク』は6か月前からスタートして、常に4~5号重なって動いています」


 (林)「大変な作業ですね!」
(山岡)「そうですね、で、前半の3か月でほとんどずっと調査をしているんです。編集部には“ご意見ハガキ”っていう読者からのおハガキが月に2000枚とか3000枚届くんです」

 (林)「そんなに届くんですか?」
(山岡)「その2000枚3000枚を毎月手分けして1枚残らず編集部員は読むんですけれども、読み続けていると、自分の中の『65歳のA子さん』『70歳のB子さん』が育ってくるんです」

 (林)「ほお!」
(山岡)「読者から来るハガキで仮説を立てて、WEBのアンケートも繰り返して企画を作り、それをお届けした後に『どうだったか』というところまで調査をして次の企画を作る、っていうサイクルを延々と回しているんです」

 (林)「『ハルメク』の読者って本を読むだけではなくて、そういうトータルのコミュニケーションを楽しんでいて、その中心にこの本があるっていうことなんですね」
(山岡)「おっしゃるとおりだと思います」

「役に立った」では不十分!

 (林)「前半3か月じっくり調査して、没になる企画もあるんですか?」
(山岡)「もちろんあります。私たちは、それは『ハルメク』がやるべきか?『ハルメク』の読者の方はハルメクにそれを期待しているか?『ハルメク』ならではの、『ハルメク』にしかできない提案ができるのか?を基準に考えるんです。一般的には『役に立った、便利だな』が合格点かと思いますが、『ハルメク』は、それだけでは足りないんです」

 (林)「ダメですか?」
(山岡)「はい。『ハルメク』は、『びっくりした』『感動した』『なんでこんなに私が知りたかったことが分かるの?』をかなえる雑誌でありたいんです。他にはない、『ハルメク』にしかない情報を提供して『ハルメクを読んでいて良かった』までいかないと、合格点じゃないんです」

 (林)「それを毎月、しかも一つの記事じゃなく、1冊にわたってこれだけの内容を用意するって…。そんなことできるんですか?」
(山岡)「それを目指しています。常に」

 (林)「そういう明確な基準があって、やるかやらないか決めていらっしゃる!僕の授業は『わかった』で十分だな(笑)。『感動した』まではいかないな」