■「第1段階は軍事的に制圧。第2段階は政治的にロシア化していく」
プーチンの目指す『ロシア化』の象徴として番組はある州に注目した。
ウクライナ南部に位置する『へルソン州』。黒海に面しクリミアにつながる土地だ。このへルソン、ロシアにとって重要な土地だった。
角茂樹 元駐ウクライナ大使
「実はクリミアというのは水が自給できない。山がちでね…。クリミアの人たちは、へルソンからの水路に頼っている。(中略)これがあるからロシアはヘルソンを確保したい。」
このヘルソンで今週大きな動きがあった。市民を取材した…。
ヘルソン女性市民
「市内のすべての政府庁舎にロシア国旗が掲げられています。市内の記念碑でソ連旗が掲げあれている場所もあります。ロシア軍が来てからすべてが変わった…」
4月25日には市長が解任され、翌日にはヘルソンの独立を問う『住民投票』が計画された。
独立を認めないゼレンスキー大統領は、ロシア軍に個人情報の開示を求められてもそれは住民投票を捏造する目的だから応じないよう市民に呼び掛けた。しかし・・・。
ヘルソン女性市民
「ロシア軍が支援物資を持ってきた時、パスポートを提示した人にだけ支給しました。ロシア兵は、そこから個人情報をメモしていました。ロシア軍はやりたい放題です。私はロシアによる侵略を支持していないので住民投票も支持しません。これは違法です」
結局、市民の強い反発によって住民投票は見送られたが、対独戦勝記念日に向けて再び計画されるとも伝えられている。
ロシア国旗が掲げられ、親ロ派の首長が就任し、独立のための住民投票・・・。これがプーチン氏の望む『ロシア化』の歩みだ。
防衛研究所 兵頭慎治 政策研究部長
「(ロシアの侵略は)2つの段階があって、第1段階は軍事的に制圧。第2段階は政治的にロシア化していく(中略)クリミアでもそうだったようにまずは、住民投票で独立の是非を問う。不正も含めた見せかけの投票かもしれないが、これで民意が得られたとして独立を宣言もしくは編入、これが政治的意図としてある。私が注目しているのはシロヴィキを束ねるドンのようなパトルシェフ安全保障会議書記が、ロシア新聞のインタビューで『ウクライナが複数の国家に分裂する可能性がある』と言っていること・・・」
つまり制圧した地域がそれぞれ独立し、親ロシアの国になっていくという未来図か。
この『ロシア化』、2014年、クリミアでは巧くいった。住民投票では同じ人が何度も投票したり、あらかじめ賛成と書かれた投票用紙が使われたり、疑惑はあったものの結果、賛成97%でクリミアはロシアに編入されたのだ。
ところが、ヘルソンでは同じようには進まないようだ・・・。