■「NATO加盟申請期間中は“5条”の対象外」


フィンランドがNATOに加盟した場合どうなるのか…。ロシア・メドベージェフ前大統領はこんなことを話した。

「NATOとの国境が倍以上になる。バルト海周辺に核がないという状況はありえなくなる」

つまり、フィンランドが加盟すれば、核配備で対抗するという警告に他ならない。

実はフィンランドの東側の鼻先にあるロシアの島、ノバヤ・ゼムリャ島がその舞台になる可能性を聞いた。この島はロシアが1991年まで核実験を100回以上行っていた所だ。

東京大学先端科学技術研究センター 小泉悠専任講師
「この島にはまだ何らかの核施設があるらしい。ロシアが核の脅しをかけるといった時に、北欧諸国の目の前に浮かぶこのノバヤ・ゼムリャ島で、爆発を伴うものかはわかりませんが何か核活動みたいなことを行って見せて牽制をするってことはある」

それだけでもヨーロッパにとっては十分な脅しになるという。また、東野教授は別の懸念を示した。

筑波大学 東野篤子教授
「フィンランドとスウェーデンが加盟を申請するのは間違いない。6月にする。NATOは直ちに入ってくださいとインビテーションを出す、ここまでは確かです。ただ加盟が実現するまでの間、一定の時間がかかる。この空白の時間に狙われることはないのかってところが難しい。はっきりしているのは、申請期間は5条の対象外だそうです」

5条とは、NATO加盟国への攻撃はNATO全体への攻撃とみなすという集団防衛条項だ。

つまり申請して実現するまでの空白期間(~通常1年、準備が整っているフィンランドとスウェーデンは短縮されて数か月か…)は、フィンランドが攻撃されてもNATO全体が攻撃されたとみなすことは難しいのだという。民族的トラウマを持つフィンランドにとって、この空白期間はとてつもなく長く感じるに違いない。

■「NATOを広げてそこに日本も入っていく」


ロシアと国境を接すると言えば日本も他人事ではない。さらに隣人には中国もいる。
河野太郎元外務大臣はテレビ番組でこう言っている「NATOをインド太平洋に広げて、そこに各国が加盟するという議論もできると思う。皆で平和と安定を守っていくという中に日本も入っていく、それは非常に重要だ」

NATOは今年6月12年ぶりに戦略概念を改定する。ロシアだけでなく、中国の脅威を今後どう位置付けるのかが焦点だ。NATOが東アジアにも目を向ける中で、いまNATOのパートナー国である日本が正式に加盟するようなことは現実としてありうるのだろうか。

筑波大学 東野篤子教授
「実は2019年あたりからNATOは中国を非常に意識していました。中国というのはNATOに新たな機会と挑戦を突き付けるものなんだと。武力だけでなく、サイバーとかヨーロッパへの恫喝外交とかが、増えてきて、何らかの相手として考えなければならないだろうと…そんな時にウクライナ侵攻があり、再びロシアに戻っていくわけですが、中国の脅威が消えたわけではない。ですから(6月に出されるNATOの新戦略概念には)ロシアと中国2つの国が入る」

NATOにとっても中国はロシアと並ぶ、いわば“仮想敵”となるというが、日本の加盟は…

筑波大学 東野篤子教授
「NATO条約の10条に、北大西洋の安全に貢献できるかと書いてあるんです。何かあった時に戦えるか…」

東京大学先端科学技術研究センター 小泉悠専任講師
「ロシアの脅威を真正面から受け止めているNATOに日本が入っていくことは現実、考えにくい。ロシアがまた今度、ヨーロッパのどこかに侵攻した時、日本は自衛隊を派遣する決断をできますか?逆に尖閣有事に、ヨーロッパが極東まで軍隊を送って来ることが現実に期待できますか?直面している驚異の性質が違うので、かえって同盟の信ぴょう性を損なうと思うんです。(河野氏の発言は)“NATOみたいなもの”をこちら側にも作ったらどうかという話かもしれないんですが、そういうものであるならば考えられるかなとは思います」

(BS-TBS 『報道1930』 4月25日放送より)