金坂さんは調理はしませんが、自ら厨房に入りご飯をよそったり、ウナギの串を抜いたりする作業も行います。
金坂さん「お客様と接することで『生の声』が聞くことができる。発想のヒントをもらえたりする」

充実感をにじませる一方、厳しい時代の流れも感じています。
金坂さん「歴史あるところ(老舗)がどんどんなくなっていると聞いたりする。しがらみから抜けられずに新しいステップを踏み出せないのが一番にあると思う」
後継者不足や経営不振などで、閉店が相次ぐなか“老舗をどう守るのか”。
飲食業を知らない“よそ者”だからこそ、固定概念にとらわれず、常に挑戦できると金坂さんは話します。
その一方で、伝統をなくさないことも大事だといいます。
金坂さん「タレの味は元に戻した。伝統あるえびやのタレに戻した。」
かつて、店のシンボルだった日よけのれんも復活させました。

この日、営業後に行っていたのは・・・。
金坂さん「いま新しいうな重の白蒲重といって、白焼きと蒲焼の合い盛りの贅沢なセットを新メニューとしてスタートするので(ホームページ用に)写真撮影をしています。」

メニューの開発は、これまで行わなかったといいますが…。
金坂さん「伝統を守り続けるためには変化をしなければ難しいので、どんどん新しいニーズに対応して、いまのニーズに合った、そしてお客様の喜ぶ顔を見るためにがんばっている」
変化を恐れない金坂さんを、長年勤める職人はどう見ているのでしょうか。
職人「初めは抵抗があったが、女将さんの考えに従業員みんなで賛同して仕事をしている」

変えるものと変わらないもの。
“古くて新しい”「えびや」を守り続けます。
金坂さん「次の100年を目指してますます愛されるお店作り、料理を出すだけでなく、えびやの雰囲気を味わっていただくような存在になりたい」
【取材後記】TUF報道部 記者 伊藤大貴
「ウナギのことなんか何も知らないだろと思われていたと思う」
金坂さんがインタビュー終了後に話してくれたことです。もともとは観光協会の職員として地元の商品開発や観光案内をしていた金坂さん。いまもウナギを焼くことはできず、「従業員に支えられて自分はできている」と感謝の思いを口にします。さらにこうも話します。
「自分は焼けないし何もできない。職人に対して(腕が)よくなったと言うと職人のやる気が出る。それはお客様にも影響すると思うんです。」
自分ができないからこそ素直にその腕を認め、結果としてやる気を引き出したり、職場の雰囲気をより良いものにできているのかもしれません。
今後は去年10月に全線で運転を再開したJR只見線で駅弁を提供することや、インバウンド需要に合わせたメニュー開発、ウナギになじみのない人に向けておにぎりの提供も検討するなど、アイデアは尽きません。
「本当は世襲が理想だけど、熱い思いを持った人が集まればできる。事業継承の新たなモデルケースになれたらいい」。
今後の老舗がどうあるべきか。その一つの答えなのかもしれません。